人気のF30系BMW3シリーズですが、前期型と後期型ではどんな違いがあるでしょうか?
実は結論を言ってしまうと実際は生産年ごとに違いがあって、
単純に前期型と後期型という括りでは収まらないというのが本当のところです。
細かな違いのすべてとなると本一冊分くらいのボリュームになってしまいます。
今回は主要な変更点に絞ってご紹介したいと思います。
極初期型と前期型
F30系の3シリーズは2012年1月に登場しますが、
初年度の2012年式と2013年式以降で既に仕様が異なっています。
そのため2012年式を前期型ではなく、極初期型と区別している資料もあります。
実は初年度の2012年式だけは極めてシンプルな仕様で販売されました。
先進装備のほとんどが未搭載かオプションだったのです。
(2012年式だけ異様に安い中古車があるのはこれが理由です。)
もし現代的な先進装備のないシンプルなクルマが欲しい方は2012年式を探すしかないと思いますが、
実際はなんらかのオプションを追加装備して購入されたクルマが多いので、
本当にシンプルな、素の状態のF30系3シリーズを買うのはかなり難しいかも知れません。
同じような話しは2014年に販売開始されたW205系ベンツC180にも当てはまり、
こちらも超シンプルなベーシックモデルは初年度の2014年式にだけ存在しました。
翌年からアバンギャルドが標準となり、ベーシックモデルは受注生産のみの販売となりました。
そのため超シンプル装備のC180はほとんど存在しません。
滅多に見かけない希少性?という意味ではランボルギーニやフェラーリ級かも知れません。
年式ごとの主な変更点
それでは2013年式以降にどんな仕様変更が行われたのでしょうか?
その変更点をご紹介しようと思います。
尚、この仕様変更情報はBMW本社や国内正規ディーラーなどの資料を元にしていますが、
実際は事前の公表なく仕様変更されて生産されていることが多いため、
一部公表資料と実際の生産車で差異が見られることがあります。
また、F30系BMWの2015年式や2017年式モデルは製造時期によって仕様が異なります。
BMWは製造年とメーカーの年式モデル表記が一致していません。
しかし本記事では市場でも一般的な登録年を基準として年式表記しています。
以下に参考情報として公式なモデル変遷情報を記載します。
この区切りごとに仕様変更が行われてますが、
実際は同ロット内でも製造時期によって仕様の違いがあります。
2012年1月~2013年7月(極初期型・前期型)
2013年8月~2014年3月(前期型)
2014年4月~2014年7月(前期型)
2014年8月~2015年8月(前期型)
2015年9月~2016年4月(後期型)
2016年5月~2016年9月(後期型)
2016年10月~2017年7月(後期型)
2017年8月~2017年12月(後期型)
2018年1月~2019年2月(後期型・最終型)
2013年式
ドライビングアシスト装備
iDrive変更(第三世代)
iDrive操作ダイヤル形状変更(大型化)
レインライトセンサー変更(2013年3月以降)
2014年式
アダプティブクルーズコントロール標準装備
Mバッジデザイン変更(Mスポーツ)
iDrive変更(第四世代)
2015年式(8月まで前期型、9月から後期型)
この年は前期型と後期型の切り替えがあり、さらに製造時期によって仕様が異なります。
F30系の中でもっとも仕様が複雑ですのでご注意ください。
基本的には2015年8月までが前期型、9月以降が後期型となり、
下記項目の多くが9月以降に変更されています。
但し、一部は8月以前から順次変更が施されており、
細かな仕様変更は年初から行われていました。
LCI化
iDrive変更(第五世代)
各ライトLED化
ヘッドライトの照射方法変更(プロジェクター式2灯からマルチリフレクター式4灯へ)
ヘッドライト形状変更
デイライト標準装備
バンパー形状変更
内装シルバー装飾、クローム装飾箇所多数追加
エンジン変更(N型エンジンからB型エンジンヘ)
ドリンクホルダスライドカバー化
ウィンカーレバー舵角センサータイプ廃止してジョイステックタイプへ
マフラー二本出しへ変更(320i、320ⅾ)
ヘッドライトウォッシャー廃止
センターパネル下小物アンビエントライト廃止
AUX端子廃止
BMW コネクティッドドライブ標準装備
レーンチェンジウォーニング標準装備
ダッシュボード右下小物入れ完全廃止
サスペンションアッパーマウントボルト5本化(前期型も最終時期は5本)
ステアリング制御プログラム変更
エンジンルーム内塗装仕様変更(クリア塗装あり)
2016年式
320dのみ遅れて後期型エンジンに換装
(320dのみ後期型ボディに前期型エンジン搭載車が存在します。一般に中期型と呼ばれています。)
2017年式
シートヒーター標準装備
内装パネル変更
マルチディスプレイオプション設定
インストゥルメントパネルダミーステッチ加工追加
iDrive変更(第六世代)
画面タッチパネル化
助手席側ドアミラー自動防眩機能廃止
レインライトセンサー変更(作動設定は変更なし)
(注:レインライトセンサーの正確な変更時期は不明。2016年9月に変更された可能性もあり。)
2018年式
Edition Shadowカタログラインナップ(最終型)
前期型→後期型 各変更点の解説
レインライトセンサー(RLS)変更
よく聞かれるレインライトセンサーについて追記します。
F30系の各モデルで評判が悪いのがオートライト機能です。
トンネルなどの暗所に進入して一度ライトが点灯すると明所に出ても消灯までに120秒もかかります。
しかし販売開始当初は消灯までに5秒のセンサーが使われていました。
これが2013年3月から消灯までに120秒のタイプに変更されています。
そのため2013年式は消灯までに5秒のタイプと消灯までに120秒のクルマが混在しています。
(3シリーズや4シリーズだけでなく、同じセンサーを使うほかのモデルも同様です。)
その後、2017年に消灯まで8秒化可能な新型センサーに変更されますが、
F30系(他のF型車含む)に関しては消灯まで120秒かかる設定が継続されました。
この2017年以降のF30系に関してはコーディングで設定変更すれば8秒化が可能です。
これに関しては下記参照記事で詳しく解説してますのでご参照ください。
フロントバンパーの違い
微細な変更なので並べて比べないと違いがわかりませんが、
後期型のバンパーはインテークが拡大されてサイドが外へ強調されています。
ヘッドライトの違い
前期型のキセノンライトがLEDライトに変わっています。
また、オプションにあったLEDライトも後期型はデザインが変わりました。
また、それに伴ってライト自体のパーツ形状も変更されています。
これも並べて見比べないとわからない程度の違いですが、
後期型のほうがやや縦寸法が薄く細目になっています。
そして上部の眉部と呼ばれる部分も前期型はポジションLEDランプでしたが、
後期型はウィンカーLEDライト化されています。
ちなみに前期型標準仕様のキセノンライトだと眉部はダミーでしたね。
(よく見比べると少し縦寸が薄くなっているのがわかります。)
マフラー1本出しから2本出しへ
320iや320dの前期型は1本出しマフラーでしたが、
後期型から2本出しに変わっています。
但し、320dのみ後期型エンジン搭載が遅かったため、
後期型ながら1本出しマフラーのクルマも存在します(いわゆる中期型)。
テールランプの変更
これはLED化されて見た目のデザインが変わっているのでわかりやすい変更です。
余談ながら後期型テールランプは社外品も多数存在するのが特徴になっています。
前期型に後期型のテールランプを移植している人は多いですね。
メーターパネルの変更
なぜか後期型=パネルディスプレイ式と勘違いされてますが、
これは2017年式からのオプションです。
F30系の最終型となるEdition Shadowが有名なため勘違いされているように思います。
エンジンの変更
後期型はN型エンジンからB型エンジンへ変更になっています。
新型エンジンはパワーと燃費が改善されたとされてますが、
これが少々?で今でも激しく議論されています。
B型エンジンは3気筒、4気筒、6気筒エンジンを共有モジュール化したことから、
コストダウンエンジンだという改悪説は根強いですね。
真相はどうなんでしょうか?
私はそれぞれのエンジン搭載車を所有したことがありますが、
静粛性はB型エンジンの圧勝でした。
シリンダー直噴エンジンのN型は燃料ポンプ音がやかましいエンジンという印象です。
ただ、N型エンジンのほうがショートストロークで小気味良く、
個人的な感想にはなってしまいますが、
メカニカルノイズも含めて走っていて気持ち良かったとは思います。
(エンジンの存在感を感じました。)
また、手元に記録してある実燃費データもやや良好でした。
余談ですが、B型エンジン搭載車は低速走行時の走りを強化する方向でギア比を変更しています。
そのため低速域はスムーズで走りやすいですが、
その反動は当然ながら上のほうに現れます。
マニュアルモードメインで走る方は少し注意したほうがいいかも知れません。
サスペンションのロードホールディング性向上
これはかなり詳しい方じゃないと知らない変更です。
2015年1月生産モデルからアッパーマウントボルトが3本から5本に強化されています。
そのため前期型も最後の約半年間はサスペンションが異なっていました。
この変更によって乗り心地を犠牲にすることなく、
ロードホールディング性が向上しています。
Mバッチデザインの変更
どうでもいい話しかも知れませんが、
2014年にMバッジのデザインが変わっています。
旧バッジは少々古く見えるので新バッジに変更している方も多いですね。
このような微細な変更もありました。
インストゥルメントパネルにダミーステッチ加工追加
これもあまり知られていないような気がしますが、
後期型はダミーステッチ加工が追加されています。
各部に追加されたシルバーやクロームパーツとの相乗効果もあって、
見た目の高級感が向上しています。
iDrive標準装備
F30系3シリーズから(一部グレードを除いて)iDriveが標準装備になりました。
このiDriveは上記のとおり、年式ごとに改良バージョンへ進化しているため、
高年式車ほど進化したタイプを搭載しています。
iDriveが使いやすいかどうかは議論の余地がありますが、
個人的には第四世代以降じゃないと不満が出そうな気はしています。
これは前期型と後期型の違いではありませんが、
中古車を購入される方はちょっと覚えておいたほうがいいかも知れません。
尚、古い第二~第三世代iDriveを搭載した2012~2013年モデルの場合、
社外のアンドロイドナビに乗せ換えている人が多い印象です。
また、iDriveの第七世代は2018年式BMWから搭載されてますが、
F30系に第七世代iDriveが搭載されることはなく、G20系からの搭載となりました。
ときどき2018年式F30モデルに第七世代iDrive搭載と記載されている中古車情報がありますが、
これは誤記だと思いますのでご注意ください。
まとめ
前期型と後期型の違いを簡単に羅列してみましたが、
実は同一年式でも細かく仕様が違っていることはあるようです。
そして、本文中にも記載してますが、
実際は「中期型」と呼べるような前期型と後期型の過渡期モデルも存在します。
さらに中古車の場合、前オーナーさんが自分で仕様変更しているのも珍しくありません。
(前期型なのに後期型の内装パーツが多数組み込まれた中古車を見たこともあります。)
決して一様ではないので中古車を買う場合は注意しましょう。
また、基本的に後期型のほうが装備グレードはアップしてますが、
中には後期型で装備が削られたものもあります。
あきらかにコストダウンされたところもあります。
後期型は前期型よりすべて装備が優れているというわけではないので注意しましょう。
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