クルマが履くタイヤには純正指定タイヤというものがあります。
さらに各メーカーが承認しているメーカー承認タイヤと呼ばれるものもあります。
その一方で多くのタイヤショップやカー用品店には大量の一般市販タイヤが置かれています。
純正指定タイヤと一般市販タイヤに何か違いはあるのでしょうか?
今回はタイヤ問題を考えてみたいと思います。
メーカー純正指定タイヤとは
これはタイヤメーカーが自動車メーカーにOEM品として納めているタイヤを指しています。
OEMとはオリジナル・エクイップメント・オブ・マニファクチャラーズの略で、
早い話しが新車に装着されているタイヤです。
クルマの開発と並行してそのクルマ用に開発されるタイヤで、
そのクルマにもっとも最適化された製品だとされています。
ただ、このタイヤは市販されていないOEM専用品などもあるため、
履き替えたくても手に入らない物もあります。
かつて私がトヨタ製スポーティカーの新車を購入したときポテンザが装着されてましたが、
そのポテンザはブリヂストンポテンザに間違いはないものの、
ポテンザの通常商品ラインナップには載っていない製品でした。
つまりOEM専用品だったというわけです。
ちなみにそのクルマにはOEMタイヤとしてポテンザとアドバンが用意されてましたが、
納車されるまでどちらを履いて来るかはわかりませんでした。
もちろん指定することは不可能でした。
尚、アドバンのほうも通常のヨコハマタイヤの製品情報には載っていないタイヤで、
こちらもOEM専用のタイヤでした。
OEMタイヤとREタイヤ
OEMタイヤに対してREタイヤというものがあります。
REとはリプレイスの略で、早い話しが履き替え用の一般市販タイヤです。
このREタイヤというのはタイヤショップやカー用品店などで販売されています。
ご存知の方も多いと思いますが、欧州車の多くは履き替え用タイヤもOEMタイヤを推奨しています。
これを一般にメーカー承認タイヤと呼んでいます。
このメーカー承認タイヤはREタイヤとは別物ですが、
やはりタイヤショップやカー用品店で購入することが可能です。
(タイヤメーカーの正規取扱店である必要はあります。)
ただ、一般にメーカー承認タイヤはかなり高額で、REタイヤに比べ流通量も多くはありません。
日本車が履くOEMタイヤ
最近の若い人だと日本のクルマはとても優秀というイメージではないかと思いますが、
残念ながら日本のクルマがそんな域に達したのはまだ最近の話しです。
ほんのちょっと前までは欧州車などと比較できるような代物ではありませんでした。
(現在でも厳密には欧州車のレベルに達していないと思いますが、それは技術的な問題ではなく、
道路環境の違いなど、クルマに求められる性能に違いがあるというのが大きいと思います。)
そんな日本のクルマは品質や性能の弱点を補うためタイヤ性能に依存していました。
「そんなの欧州車だって同じじゃん」と思った方もいると思いますが、
欧州車はクルマの性能に見合ったタイヤを必要としていたのであって、
日本車のそれとはまったく意味が異なります。
かつての日本車のOEMタイヤは完全な新車専用品でした。
即ち乗り心地だけに特化したタイヤとか、グリップ性能だけに特化したタイヤなど、
言わばクルマの根本的な弱点をOEMタイヤによって隠していました。
対して欧州車のOEMタイヤはあらゆる走行条件でクルマの性能を引き出すことを目指しており、
「新車のときだけ乗り心地が良ければOK」みたいな考え方で選ばれてはいませんでした。

1980年代にポルシェが959のために時速400kmまで耐えられるタイヤの開発をタイヤメーカーに求めたのは有名な話しです。
当時のタイヤメーカーはまだ300kmまで耐えられるタイヤを必死に開発していた時代で、
いかにポルシェ959が異次元のクルマだったかがわかると思います。
メーカー承認タイヤとREタイヤ
ここで一つの疑問が浮かびます。
かつて日本のクルマが履いていたOEMタイヤが実質的に新車専用品だったことはわかりましたが、
欧州車はそうではなかったはずです。
ということはOEMタイヤとまったく同じREタイヤが存在するような気がします。
これはどうなんでしょうか?
結論からいうと存在します。
残念ながら組成から製法までまったく同じかどうかはメーカーが公表していないので不明ですが、
少なくとも同じ製品名、同じ型番、同じ工場で作られたタイヤが存在しています。
まったく同じとしか思えないこれらのタイヤですが、少しだけ違うところがあります。
それは流通ルートと販売価格が異なります。
また、REタイヤには転がり抵抗値やウェット性能指数を表示したラベルが添付されていますが、
メーカー承認タイヤにはこれがありません。
タイヤメーカーは対外的には「OEM製品とRE製品は仕様が異なります」と回答していますが、
これをしっかり検証した信頼できるデータはなく、これも本当かどうかは謎です。
タイヤメーカーは「純正タイヤにご満足いただけているなら次もOEM製品を、
他に何か求めている性能があるならそれを追求したRE製品からお選びください」と言っています。
つまりタイヤメーカーは「どちらの製品も自信あります」ということなんだと思います。
メーカー承認タイヤの始まり
メーカー承認タイヤの元祖と呼ばれているのがポルシェの純正指定タイヤです。
ポルシェの場合「N0」とか「N1」などという表記が入っています。
Nの後ろの数字は承認何世代目に当たるタイヤなのかを表しています。
BMWの場合は★マークが、ベンツの場合はMOやMOE、
フェラーリならFやKの文字がタイヤに刻まれています。
これらはすべてそのメーカー(クルマ)の専用品で、
交換用タイヤとして正規ディーラーを中心に販売・供給されてますが、
もちろん街のタイヤショップなどに取り寄せてもらうことも可能です。
こういったメーカー承認タイヤはそのクルマへの適正と性能を保証している製品で、
多くのユーザーが愛用しています。
ただ、良いことだらけのように感じられるメーカー承認タイヤですが、
一つ大きな問題もあります。
それが価格です。

一見同じタイヤなのに価格差がある
メーカー承認タイヤを選んでタイヤ4本を交換するとどれくらいの費用がかかるでしょうか。
BMWやベンツの場合、正規ディーラーで承認タイヤに交換すると30~50万円もかかります。
超高性能モデルのタイヤだと100万円近くかかることもあります。
それに対して同メーカーの一見同じに見えるREタイヤへの交換ならば遥かに安く済みます。
おそらく実売価格では半額以下ではないでしょうか?
そうなると当然ながらREタイヤを選ぶ人も出て来ます。
そこで問題となるのが果たして性能は違うのか?ということだと思います。
これに関して明確な答えを導き出すのはかなり難しいです。
もちろん明らかに下位ブランドの安価な同サイズタイヤとの比較なら違いはわかりやすいですが、
メーカー承認タイヤと同じメーカーの同ブランドREタイヤの場合、
はっきりいってその違いがわかる人なんてほとんどいないと思いますし、
かなり限界まで攻めたときに初めて違いが現れるくらいの小さな差しかないものです。
それが実情なので何の迷いもなく安いREタイヤを選ぶ方もたくさんいます。
REタイヤの選択は恥ずかしいことなのか?
まったくそんなことはありません。
正規ディーラーや一部の専門店は「REタイヤなんか勧めません」と言うかも知れませんが、
例えば911GT3 RSに乗っている私の友人は承認タイヤなんて一度も履いてません。
使用目的が主にサーキット走行ばかりなので、Sタイヤやスリックタイヤばかり履いています。
これはちょっと極端な例ですが、目的に合ったタイヤを選ぶことのほうが重要で、
メーカー承認タイヤの正体はあくまでも平均得点を追求したタイヤだと考えていいと思います。
承認タイヤよりグリップを重視するとか、乗り心地を重視するなら選択肢を拡げるほうが自然です。
ただ、とくに何かに特化した性能を求めていないのであれば、
確かにメーカーが推奨する承認タイヤのほうが(やや高価ながら)安心感や満足度は高いと思います。
まとめ
私はかつてベンツC200AMGラインにREタイヤのブリヂストンREGNOを履いていたことがあります。
履いていた期間は短くたった8ヶ月ほどでしたがとても好印象でした。
(贅沢にたった8ヶ月でタイヤを交換したのではなく、1万km走行のテストとして履いていました。)
私は基本的に自分のクルマにはメーカー承認タイヤを選ぶようにしてますが、
過去の経験から、しっかりしたブランドのREタイヤなら性能面で劣ると感じたことはありません。
残念ながら同じメーカーの承認タイヤとREタイヤを履き比べたことはありませんが、
正直、価格差ほどの違いはないのではないかと感じており、
REタイヤを選択しても大きな問題はないように思います。
ただ、ポルシェ911のようにタイヤ性能が大きく走りに影響するクルマの場合、
安易にメーカー指定外のタイヤは選ばないほうが良さそうです。
タイヤ選択だけの問題ではなく、クルマの特性も考慮すべきでしょうね。
昨今は純正指定でないタイヤもメーカー承認タイヤに接近した性能を実現しており、
タイヤ選択も奥深いテーマだと言えます。
今後も当ブログではこの問題を追って行きたいと思っています。
ブログ村にはさまざまな情報が溢れています。
是非、訪れてみてください!

にほんブログ村
コメント