昔から輸入車オーナーは愛車にコーディングしている人が少なくないですが、
最近は国産車でも施工可能なクルマが増えています。
そんなコーディングはプロ施工と自分でツールを使って施工する方法がありますが、
施工ツールが安価に出回った現在はセルフ施工する方が増えてますね。
しかし、素人が施工するのは危険とも言われます。
そのあたりはどうなんでしょうか?
今回はコーディングについて検証してみたいと思います。
コーディングとは?
コーディングとは簡単にいえばプログラムの書き込みです。
クルマの場合は一般に車両設定を変更することをコーディングと呼んでいます。
現代のクルマは多かれ少なかれコンピュータによって車両を制御していますが、
そこには設定されたプログラムがあり、クルマはそのプログラム通りに作動しています。
しかし、多くのクルマはあらかじめ複数の設定を組み込んだプログラムを持っていることから、
その設定を変更することで違った動作をさせることが可能になります。
本来のコーディングはメーカーが書き込んだプログラムを書き換えてしまうことを意味しますが、
そこまで危険な作業をしているわけではありません。
正規ディーラーの対応
実はコーディングに関しては正規ディーラーでも対応が分かれているように思います。
ほとんどのディーラーがコーディングに関してはNGですが、
まったく受け入れないディーラーとそうではないディーラーが存在します。
例えばベンツやBMWの場合、コーディング車を入庫拒否するディーラーもあれば、
有料施工してくれるディーラーもある状態です。
このように同じメーカーのクルマのディーラーでありながら統一されてないのは困りますね。
困るというかそれはユーザーから見たら「はっきりしてくれ」って状態ですね。
しかし、それぞれの正規ディーラーにも言い分はあります。
違法なのか?
コーディングに関して寛容なディーラーとそうではないディーラーが存在することはわかりましたが、
なぜそんな事態になってしまうのでしょうか?
理由は変更内容によっては保安基準に触れてしまう可能性があるからです。
現代のクルマは世界中の国で販売するためさまざまな設定があらかじめ組み込まれています。
その設定の中から輸出先の仕様に合わせた状態にセッティングしたクルマが販売されますが、
その設定を違う国や地域の状態に変更することができます。
正に自分好みな状態にカスタマイズできるわけですが、
自動車の保安基準というのは国によって違いがあり、
安易に設定を変更してしまうとその国の保安基準に違反してしまう恐れがあります。
そのため各ディーラーの対応も分かれてしまうのだと思います。
もちろん厳密にいえばそんな危険な設定項目はほとんど存在せず、
自由に好みの設定に変更してしまっても保安基準に触れてしまうケースは稀です。
人気コーディングの中にはUSサイドマーカーのように車検不可というのもあります。
みんながやっているからという理由で安易にコーディングはしないほうがいいです。
ライト関係は少々危険ですね。
しかし、ワイパーやサイドミラーの動きを変えるとか、
シートポジションの設定を変えるようなコーディングはまず保安基準には違反しません。
正規ディーラーにコーディングNGの店が多いのは保安基準云々というより、
実はその施工技術や施工方法を知らないというほうが正解な気がします。
私は多くのメーカーの正規ディーラー関係者や整備士を知ってますが、
みんな驚くほどその知識を持っていません。
あれでは依頼されてもできないと思います。
整備工場での施工
現在では多くの整備工場がコーディングを業務として引き受けています。
メニュー内容やそれぞれの施工料金は整備工場やお店によって異なりますが、
一つの項目を施工して5千円~1万円前後でしょうか?
整備工場は業務用のOBD接続機器(業務用診断機)を介して施工しますが、
その際はクルマに外部給電して安全を確保しています。
高価な業務用機器を使用して施工するため上記のような料金となるわけです。
もちろん施工する技術料も含まれます。
ちなみに同じような作業は簡易的なOBD接続機器とスマホアプリでも施工できます。
使用機器の価格を比べると比較にならないくらい差がありますが、
的確に作業されていれば問題なく同じ結果を得られます。
では何もかもが同じなんでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
施工作業時の通信に対する親和性の高さがまったく異なります。
本職の整備工場ではこの信頼性と安全性を確実に確保した上で作業が行われます。
そのため、それなりの作業工賃が発生するわけです。
セルフ施工の危険性
現在はさまざまなスマホアプリでコーディング施工が可能となっています。
数千円で購入できるOBD接続ツールとスマホアプリで施工できるならこちらを選ぶ方も多そうです。
しかし、このコーディングという作業はやや危険を伴う作業でもあります。
具体的には施工中に通信が途切れたりすると最悪エンジンが始動できなくなります。
身近なデバイスだとWindows PCなどをアップデートするときも、
「電源を切らないでください」と警告が表示されると思いますが、
基本的にはこれと同じです。
プログラムの書き換え中に通信が遮断されるとプログラムが壊れてしまう恐れがあり、
そうなると初期化して復元作業を行わないといけません。
(あるいはバックアップデータを読み出して復旧する必要があります。)
もうおわかりだと思いますが、こういった復旧作業を行えるスキルがないと危険なわけです。
ちなみにクルマのコーディングトラブルでのパラメータリセットが必要になった場合、
初期化ではなくバックアップデータからのリセットがデフォルトです。
それを知らない整備工場などもありますので注意しましょう。
実際に危険なのか?
パソコンのファームアップやOSのバージョンアップなども基本的に同じですが、
スキルのある方ならそれほど危険な作業ではありません。
作業工程についてはやり方を間違えなければそれほど難しいわけでもなく、
商売として施工を請け負っている整備工場やカーショップが言うほど危険ではないです。
ただ、問題はそこではありません。
問題は「どんな機材を使って施工しているのか?」という点です。
つまり施工機材の信頼性の話しになります。
一般の方が施工に使っている安価なOBD接続ツールは通信自体の信頼性が低いです。
多くはBluetoothやWi-Fiで接続されていると思いますが、
これらは作業中に途切れる恐れがあります。
また、気をつけないとスマホのバッテリー切れなどという恐れもあります。
おそらく業務用機器を使っている整備士さんから見たら、
「よくそんな危険な機材で…」というレベルです。
また、実際に簡易OBD接続機器を使っている途中にトラブルが起きてしまい、
エンジン始動不能に陥ってしまうクルマもあります。
そんな悲劇を目の当たりにしているから整備士さんは素人施工に警鐘を鳴らすのだと思います。
有名なスマホアプリのBIMMER CODEなどは推奨OBD接続機器を公開しています。
OBD接続にはそういう推奨機器を使うようにしましょう。
トラブルを起こす人の大半は品質不明な格安OBD接続機器を使っていることが多いです。
この二つのOBD接続ツール(アダプタ)は常時車載用として長く使ってますが、
これまで一度も通信トラブルを起こしたことはありません。
少々高いですが、買うならこれくらいの製品を購入したほうがいいと思います。
プロ施工と素人施工の違い
【プロ整備士の施工】
車載バッテリーではなく外部給電している
親和性の高い業務用機器を使用している
コーディングプログラムを解析して作業している
【素人の施工】
施工時の電源が車載バッテリー
安価で簡易的なOBD接続ツールや市販アプリを使用している
メニュー情報だけで施工している
どちらも目指している結果と行っている作業は同じですが、
使用している機器の信頼性や施工時の情報信頼性に大きな差があります。
プロに依頼するということは安心確実な作業に対してお金を出しているわけで、
確かに成功すれば同じ結果が得られるものの、
作業プロセスの精度と信頼性は段違いだと言えます。
自分でコーディングしている方が「クルマ屋にやってもらうなんて…」と言われますが、
こういうところにコストをかけるか自分でやって危ない橋を渡るかは個人の判断です。
ただ、現在市販されている多くのOBD接続ツールの信頼性は上がっており、
余程のミスをしない限り、致命的なトラブルに見舞われる確率は低いと思います。
このような高価な診断機を使えば整備工場と同じようなコーディングが可能ですが、
その場合でも外部給電するなど、整備工場とまったく同じ作業環境を作ることは困難です。
代表的なコーディング例
では施工されるコーディングにはどんなものがあるでしょうか?
主なものを書き出してみたいと思います。
デイタイム・ランニング・ランプ(デイライト)有効化
ワンタッチウィンカー点滅回数変更
ナビ走行中ロック解除
アイドリングストップ無効化
スタートアップロゴ変更
サイドミラー自動格納
リアワイパー非連動化
ウェルカムライトパターン変更
USサイドマーカー点灯
などなど、他にも数え切れないほどのメニューがあります。
車種特有のメニューなどもありますので、数百項目とかになるかも知れません。
これを整備工場やカーショップで施工してもらうとかなりのお金がかかってしまいますが、
自分でやれば自由に何点でも施工可能ですし、いつでも元に戻すことができます。
それが理由でセルフ施工される方が増えているわけですが、
気をつけないと知らず知らずのうちに保安基準に違反してしまう恐れもありますし、
クルマを不調にしてしまう可能性もあります。
仮にセルフ施工されるとしたら自己責任を理解する必要がありますし、
万一、保安基準に違反した場合の法的責任も負わねばなりません。
すべてを変更できるわけではない
コーディングによってクルマを自分の使いやすい状態に仕上げることが可能ですが、
なんでも変更できるわけではありません。
一般にクルマのコーディングというのはあらかじめ設定された項目を変更しているだけで、
制御プログラムそのものを書き換えるようなことはしていません。
プログラミングの世界でコーディングといえば書き換えることを指していますが、
通常、そこまではしませんし、そこまでする整備工場やカーショップもありません。
少々危険なことをしてるように思われているコーディングですが、
単に設定変更してるだけなのでそこは安心して施工しても大丈夫です。
また、上記のように別の設定に変更しているだけなので、
あらかじめ設定されていないような動きに変更することはできません。
クルマによっては過去にはできたのに現在は設定できなくなった項目などもあります。
最新の情報を得た上で施工するのが基本中の基本になりますので注意しましょう。
例えば現在のBMWはワンタッチウィンカー5回点滅化はできなくなりました。
過去には施工可能だった人気項目ですが、
現在は車体制御プログラム自体から「5回点滅設定」は削除されています。
削除されているのでコーディングによって変更することもできないわけです。
セルフ施工は危険?(結論)
結局のところ自分で施工しても大丈夫なんでしょうか?
OBD接続ツールやアプリを販売している会社はセルフ施工を推奨しているし、
整備工場やカーショップは危険だと言っています。
よくわからないですね。
これは実に簡単で、ある程度のスキルがある方ならセルフ施工しても問題ないと思います。
本文にも書いてますが、整備工場が言うほど難しいことをしてるわけではありません。
ただ、まったくデジタルスキルがないような方が見よう見真似で作業するのはおすすめしません。
中にはYouTube動画で勉強して作業するという方もいるかも知れませんが、
そういう動画を見て何をどう作業しているのか理解できるなら大丈夫ですが、
何をやってるのかまったく理解できないなら危険です。
一部の整備工場はスマホアプリと業務用診断機を比べて危険だと指摘していますが、
実際はそんなに単純な話しではありません。
スマホアプリにもしっかり作られた製品が登場しています。
危険なのはクルマとの通信接続環境の信頼性の問題であって、
アプリによっては下手な業務用診断機より深層まで入り込める製品もあります。
また、ロートルな業務用診断機などよりスマホのほうが高速なCPUを搭載しており、
応答速度もスマホのほうが速かったりします。
個人的にはそういうのを理解していないプロ整備士なども危険だと思います。
デジタルスキルの高い整備士以外には頼まないほうが安全でしょうね。
現在市販されているスマホアプリの多くは自動的にバックアップを取ってくれたり、
万一に備えてリカバリーの方法を解説してくれているものもあります。
施工アプリの信頼性はかなり向上していますので、
実際にOBD接続する機器の通信環境の遮断などにさえ気をつければ、
致命的なトラブルに見舞われることはほぼないと思います。
もちろん、施工時に他のアプリを同時起動させないとか、
当たり前にして最低限のデジタルスキルは必要です。
現在はBluetoothやWi-Fiのような無線通信ではなく、
スマホとクルマを有線接続するOBD接続ケーブルも販売されています。
もしご自身にある程度の知識があり作業内容が理解できるのであれば、
自己責任をしっかりと理解した上でトライしてみてもいいと思います。
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