ベンツSクラスやBMW7シリーズなどの高級車は型落ちすると価格が下落します。
ちょっと頑張れば国産高級車を買うお金で購入が可能になりますが、
そのような中古車に手を出しても大丈夫なんでしょうか?
今回は上級クラスの中古車について、現実的な視点で検証してみたいと思います。
W222系ベンツSクラス
まだまだ現行モデル感の強いW222系ベンツSクラスですが、
後継新型のW223にモデルチェンジされて型落ちとなりました。
中古車高騰という市場の動きもあって、一気に価格が落ちたという印象はありませんが、
それでも前期型なら300万円台前半で購入可能な中古車も存在します。
しかし、現実問題として300万円台のSクラスなんて買っても大丈夫なんでしょうか?
![ベンツSクラス W222](https://sskoba.com/wp-content/uploads/2022/10/benz-w222-2002.jpg)
![ベンツ W223 Sクラス](https://sskoba.com/wp-content/uploads/2022/10/benz-w223-2000.jpg)
維持費は桁違いに高い?
ベンツSクラスは単に高級車であるだけでなく、
最上のクルマになるべく設計された高性能車でもあるため、
先進機能が惜しみなく投入されたクルマとなっています。
そのためクルマとしての基本機能以外にも定期的なメンテンスを必要とする箇所が多数あり、
通常の点検だけでもお金がかかるクルマとなっています。
これはどういうことかというと予防整備が必要な箇所が多いことを意味しています。
また、先進機能というのは高額パーツを使っていることが多く、
走ることに直接関係ないところでも高額整備が発生しやすいといえます。
そのようなクルマなので、ちょっとしたパーツ交換だけでも桁違いの整備代が必要になって来ます。
単純な維持費という括りだけでは計れない費用が発生するクルマなので、
整備予算に余裕のない方が乗るにはとても厳しいクルマだといえます。
故障しても直さない?
これはベンツに限った話しではありませんが、
中古車で買う人にとって重要なのは普通に動くことです。
新車で買うような方は普通に動くだけでは満足せず、
すべての機能を100%使う前提で購入されていると思いますが、
中古車の場合は壊れても走る機能に関係ないところなら直さない人も多いです。
Sクラスだとシートのマッサージ機能なんてのがその代表ではないでしょうか?
この故障はお金のある方でも直さず放置してるのをよく見かけます。
また、車内で音楽やラジオを聴かない人だとオーディオの故障なんかも放置してる人がいますね。
これらも故障内容によっては直すのに10万円単位のお金が必要になります。
![ベンツSクラス W222](https://sskoba.com/wp-content/uploads/2022/10/benz-w222-2001.jpg)
驚愕!ベンツSクラスの高額修理
ではそんなSクラスは壊れるとどれくらい修理代がかかるのでしょうか?
もちろん壊れた場所や故障内容にもよるので一概には言えませんが、
故障してしまうと厄介なところをいくつか見てみましょう。
サスペンション関係のトラブル
これはベンツ最大の危険ポイントの一つで、極めて高額修理になりやすい箇所です。
エアサスを4輪交換したら確実に100万円コースです。
Sクラスの場合、上級モデルになると油圧式可変サスペンションを搭載してますので、
更に高額修理となります。実に200万円コースです。
(当初S550ロングにオプション設定、AMGモデルに標準搭載)
こんな高額修理を要するサスペンションなんて使って欲しくないと考えるかも知れませんが、
ベンツSクラスはこの高級なサスペンションを精密に稼働させることで優れた乗り心地や、
非常に高い走行安定性を実現しています。
これがマジック・ボディ・コントロールと呼ばれるもので、
大変優れた機能な反面、壊れたらとてもお金がかかってしまいます。
運転支援システム関係のトラブル
これも壊れると高額修理になりやすいところです。
ベンツSクラスに限らず、高級車には膨大な数のセンサーが装着されており、
それを制御するECUも各所に搭載されています。
一例を挙げるとヘッドライトですらECUを搭載して制御しています。
そのためヘッドライトにトラブルが起きると高額な修理費用が発生します。
ある日ヘッドライトの片方が消えていたとします。
普通のクルマなら1~2万円前後の修理代をイメージするところですが、
W222系Sクラスだと下手すると10~20万円前後かかったりします。
ヘッドライトが壊れただけで20万円もの修理代がかかるクルマなんてそうそうありません。
他にもレーダーセイフティ関係のカメラやECUが壊れれば20~50万円の修理代がかかります。
高度な運転支援システムはセンサー一つが壊れただけでも全体に影響しますので厄介です。
エンジンのトラブル
エンジンはとても高価なパーツが惜しみなく使われています。
普通のクルマなら新品交換しても5万円前後で済むようなパーツがSクラスだとその数倍はします。
ましてエンジンコンピュータなんか壊れたらとんでもない修理費用が必要で、
純正新品を使って修理しようものなら軽く30~40万円以上はかかります。
中古でも15万円前後はしますね。
先代W221あたりになると中古パーツの需要が落ち着いており、
数万円でチェック済の中古ECUが手に入ったりしますが、
W222はまだ半分現行車のようなクルマなので安価に入手するのは難しいですね。
このようにエンジン関係の故障などが発生しようものなら高額修理を覚悟せねばなりません。
エンジンだと100万円以上の修理代も珍しくないクルマです。
![](https://sskoba.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/b-man.png)
W222あるあるの故障の一つがエンジンコンピュータの故障です。
ハーネスから入り込んだオイルによって壊れる有名なトラブルもありますし、
熱害によって物理的に壊れるケースも多々あります。
なにしろなぜかSクラスはエンジンの真上にECUを置いています。
ストーブの上にコンピュータを設置してるようなものです。
ちなみにAMGモデルはECUの設置場所を変えてますね。
それが普通だと思います。
他にも一発10万円超えの修理は珍しくない
実際のSクラスは世間で思われているほど簡単に壊れたりはしませんが、
日本車みたいにまったく壊れないクルマではありません。
高額なクルマらしくないつまらない故障は多く、
運が悪いと毎月のように些細な故障を経験する人もいるようです。
壊れても1~2万円で直るならそんなに心配することもないのですが、
困ったことにSクラスは何もかもが高いです。
ナビやオーディオが壊れたらやはり20~40万円くらいはかかりますし、
ちょっとしたセンサー一つを交換してもすぐ10万円くらいかかります。
ポンッと新車で買えるようなお金持ちなら10万円の修理代なんて何とも思わないでしょうが、
頑張って中古車で買う人にとっては深刻な問題です。
(実際のところ、新車で買う人は新車保証で直してしまいますね。)
![ベンツSクラス W222](https://sskoba.com/wp-content/uploads/2022/10/benz-w222-2003.jpg)
ベンツの定期メンテナンス
クルマには一定距離を走行すると交換を推奨されるパーツというのがあります。
もちろんベンツも例外ではありません。
代表的なものを見てみましょう。
走行5万kmくらいで交換を推奨
- ブレーキパッドとブレーキセンサー(摩耗状況に応じて)
- フューエルフィルター
- エアフィルター
- イグニッションコイルとスパークプラグ
- ブローバイホース
- ATFとフィルター
- メインバッテリーとサブバッテリー
走行8万kmくらいで交換を推奨
- カムシャフトセンサー
- クランクシャフトセンサー
- ウォーターポンプ
- サーモスタット
- エアフロメーター/エアマスセンサー
- フューエルポンプ
- O2センサー
- サスペンションとアッパーマウント
- スタビライザーリンク
- アイドル制御バルブ
走行10万kmくらいで交換を推奨
- ブレーキディスク4枚(実際は5万kmくらいで交換推奨)
- Vベルトとテンショナー
- エンジンマウントブッシュ類
- カムシャフトカバーガスケット
- スタビライザー関係ブッシュ類
- 上記5万kmごとの消耗品交換一式
上記が代表的な交換推奨パーツ群です。
実際はそのクルマの状況に応じて予防整備的な観点からも交換を推奨されます。
もちろん思ったほど傷みがなく交換推奨されないこともあります。
そしてこれが重要ですが、Sクラスは一般感覚からすると何もかもが高いパーツばかりです。
何か不具合があって修理入庫すると故障したパーツの交換だけでなく、
他のパーツに劣化が見つかり「一緒に交換しておいたほうが…」となりやすいです。
もちろんそれはどんなクルマでも一緒ですが、
Sクラスのような修理代の高いクルマは壊れる前に予防整備しておいたほうがお金がかかりません。
壊れてから修理していると他にも不具合が拡がったりして良いことは一つもないのです。
ベンツSクラスというのはそういうクルマです。
だから一度修理入庫したら諸々合わせて最低50万円くらいは覚悟しておいたほうがいいと思います。
![](https://sskoba.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/b-man.png)
ベンツに限らず社外品のパーツを使って安く直しますと宣伝している整備工場は多いですが、
優良な有名整備工場でそのような宣伝をしているところはほとんどありません。
しっかり直したかったら「ここはケチったらダメ」と言ってくれるのが優良工場だと思います。
そういう整備工場は社外品パーツの有効的な使い方にも長けてると思います。
故障発生率はどうなのか
ベンツSクラスの維持費や整備費がとても高いことはわかりましたが、
問題はどれくらい壊れるのかだと思います。
私の身近にいるSクラスオーナーを見てみると、
実はほとんど故障入庫はしていません。
もちろん新車で買って乗っている人の故障は少なそうですが、
中古車で買った人でもそれほど故障で悩まされた人はいないようです。
もちろん故障リスクの低そうな中古車を厳選して買っているというのもありますが、
ある程度しっかり整備されたクルマならそれほど心配する必要はない印象です。
本当のところはどうなんでしょうか?
身近なSクラスでもっとも長く乗られているクルマは2015年式前期型のS550です。
新車で購入されて7年経過していますが、現在までに大きな故障は一度も起きていないようです。
このクルマは正規ディーラーで定期的な点検を欠かしたことがなく、
予防整備も含めてかなりお金をかけてパーツを交換しています。
このクルマはW223のS500が納車されると下取りに出される予定ですが、
こういうW222が「安心の一台」になるんじゃないかと思います。
怪しげな社外品のパーツは一切使われておりませんし、
上に掲げたようなパーツは該当箇所の多くが交換されています。
おそらく認定中古車の鏡のような商品になると思います。
つまり…故障修理は経験していないが、
高額な予防整備は欠かしていないクルマということです。
こういうクルマの故障率は低いと思います。
正規ディーラー整備のクルマは同様に一定の品質を保っているのではないでしょうか?
同じ年式の同じグレードのS550でも、あまりお金をかけずに乗られていたクルマだと、
潜在的な傷みが蓄積しており故障率は高いように思います。
ベンツSクラスのようなクルマは整備履歴でまったく変わってしまうので、
「さすがベンツ!全然壊れないよ」という人もいれば、
「ベンツなんて故障ばかりでダメだよ」ともなるんだと思います。
結論…買っても大丈夫なのか?
![ベンツSクラス W222](https://sskoba.com/wp-content/uploads/2022/10/benz-w222-2004.jpg)
しっかり整備されたクルマでも中古車である以上はパーツ交換整備が必要になります。
その費用は確実に10万円単位で請求されます。
そのお金が問題なく捻出できる方なら買っても大丈夫だと思いますが、
高額な予防整備費用が厳しい方は手を出さないほうが身のためだと思います。
まして故障してしまったら否応なく大出費確定です。
結論としては「買っても大丈夫だがお金がかかる」ということですね。
やはりベンツSクラスは「高額整備は避けられないクルマ」なんです。
「程度の良いクルマを買えば大丈夫」
などと聞くこともあるわけですが、
はっきりいって無理です。
壊れなくても壊さないためにお金をかける必要があります。
「社外の安いパーツもある」
と聞くこともあります。
しかし、これも難しいです。
というのも社外品パーツは使っても大丈夫なところと、
使わないほうが(結果的に)良いところがあるからです。
さらにいうと社外品のパーツでもSクラス用は高いです。
つまりどう転んでもSクラスはお金のかかるクルマなんです。
W222系ベンツSクラスはカッコ良いですし、
押し出しも強く、もしかしたらW223より好きな人が多いかも知れません。
300万円台で購入できるなら買いたくなるクルマですが、
簡単に100万円くらいは飛んで行くクルマだということを忘れないようにしましょう。
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