最近はランフラットタイヤを標準装備したクルマが増えてますが、
乗り心地が悪かったり、タイヤ自体が高価だったりとデメリットも目立ちます。
そのためランフラットタイヤからノーマルタイヤへ交換してしまう人が一定数います。
今回はそんなランフラットタイヤについて検証してみたいと思います。
ランフラットタイヤとは
ランフラットタイヤとはサイドウォールをノーマルタイヤより強化して製造されたタイヤで、
パンクしても距離80kmほどを時速80kmまでの速度で走行できるよう作られたタイヤのことです。
(ISOの技術基準より)
もちろん実際の走行性能はそれぞれの製品やパンク状況によって変わってしまいますが、
おおよそタイヤ店などへ駆け込めるくらいの距離は走れるタイヤという認識でいいと思います。
ランフラットタイヤとノーマルタイヤ
万能タイヤに思われているランフラットタイヤですが、
実はランフラットタイヤをノーパンクタイヤと勘違いしている人がいます。
もちろんそんなことはなく、普通にパンクしますので注意が必要です。
ランフラットタイヤはパンクしない構造のタイヤというわけではありません。
また、ランフラットタイヤは修理不能と思っている人がいますが、
ノーマルタイヤと同様のパンクであれば修理は可能です。
(ノーマルタイヤと同様、サイドウォールの破損は修理できません。)
しかし、実際にパンク状態で走行してしまうと修理不能になってしまうのは事実で、
それが理由で「修理不可能」と思われているようです。
つまりランフラットタイヤでもノーマルタイヤと同様にパンク対応すれば問題ないわけで、
パンクしても走行しないようにするということですね。
しかしそれではランフラットタイヤの意味がないですよね?
そうなると「ランフラットタイヤじゃなくてもいいんじゃない?」という考えが浮かびます。
その結果、ノーマルタイヤへ交換してしまう人が現れるわけです。
ノーマルタイヤ交換のデメリット
ランフラットタイヤを標準とするクルマのサスペンションの設定はどうなっているんでしょうか?
これはメーカー問わずランフラットタイヤ用の設定になっています。
ただ、ノーマルタイヤを履けないわけではありませんし、走行に支障を生ずるわけでもありません。
問題なく走行は可能です。
では具体的にはどんなデメリットがあるんでしょうか?
《ノーマルタイヤでのデメリット》
◆ タイヤのヨレを感じる
ノーマルタイヤを履くとタイヤのヨレを感じやすくなります。
これはランフラットタイヤ用サスペンションがかなり硬い設定になっていることが原因で、
サイドウォールの柔らかい通常タイヤを履くとたわむような挙動が起きてしまいます。
ただ、走行に支障が出るほどグニュグニュとたわむわけではありません。
◆ パンク修理キットの搭載が必要になる
パンク対策として修理キットを積む必要があります。
ただ、車載する修理キットはあくまでも簡易修理用であり、
これを本当に使ってしまうと本格的なパンク修理が困難になります。
一般的にはパンク修理キットは使わないほうがいいとされており、
本末転倒な話しながら、ロードサービスを要請するほうが良いとされています。
上記記事でパンク修理キットを使わないほうがいい理由を解説しています。
合わせてお読みください。
脱ランフラットタイヤしたクルマたち
次に実際に脱ランフラットタイヤしたクルマをご紹介します。
乗り心地などの印象はオーナーさん自身に評価してもらいましたが、
こういうのは極めて感覚的なものなので参考程度ですかね。
あくまでも一つの意見としてご確認いただけたら幸いです。
(交換寸前の古いタイヤと交換した新品タイヤの比較は難しいです。)
また、タイヤの価格は評価が難しいです。
メーカー承認タイヤとリプレイス用のタイヤではかなり価格が違うものです。
つまりランフラット(承認タイヤ)とノーマルタイヤ(リプレイスタイヤ)の価格を比べればリプレイスタイヤのほうが安いのは当たり前なので、
こちらも★の数は価格の満足度という意味で解釈いただけたら幸いです。
ベンツC200 AMGライン
このクルマはかつて私が所有していて、友人に売却したクルマです。
私はコンチネンタルのランフラットタイヤやノーマルタイヤのレグノで乗ってましたが、
友人は私から購入後にピレリのランフラットタイヤに履き替え、
その後、2回目のタイヤ交換時にノーマルタイヤを選びました。
現オーナーが履いていたタイヤ履歴は以下になります。
車種 | ベンツC200 AMGライン |
交換前のタイヤ | PIRELLI P-ZERO PZ4 (ランフラット) |
現在のタイヤ | BRIDGESTONE REGNO GR-XII (ノーマルタイヤ) |
乗り心地 | ★★★☆☆ → ★★★★☆ |
走行安定性 | ★★★★★ → ★★★★★ |
タイヤ価格 | ★★☆☆☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ寿命 | ★★★☆☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ寿命は走行距離比で残ミゾから判断しています。
BMW420i グランクーペ ラグジュアリー
このBMWはノーマルタイヤからランフラットへ交換後、
再びノーマルタイヤへ戻した経緯を持っています。
新車購入時に履いていたタイヤはピレリP ZERO(ランフラット)で、
1回目のタイヤ交換でアジアンタイヤのナンカンに交換しています。
つまりランフラット→ノーマルタイヤ→ランフラット→ノーマルタイヤというわけです。
ランフラットのポテンザS001への交換時に18インチから19インチホイールへ変更しており、
それもあって一気に乗り心地が悪くなったと感じられたようです。
ちなみに一番乗り心地が良かったのは18インチホイール+ナンカンタイヤだったそうです。
車種 | BMW420iグランクーペ |
過去のタイヤ | PIRELLI P-ZERO (ランフラット) |
過去のタイヤ | NANKANG NS-2 (ノーマルタイヤ) |
交換前のタイヤ | BRIDGESTONE POTENZA S001 RFT (ランフラット) |
現在のタイヤ | MICHELIN PILOT SPORT 4 (ノーマルタイヤ) |
乗り心地 | ★★☆☆☆ → ★★★★☆ |
走行安定性 | ★★★★☆ → ★★★★☆ |
タイヤ価格 | ★★☆☆☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ寿命 | ★★★☆☆ → ★★★★☆ |
タイヤ寿命は走行距離比で残ミゾから判断しています。
BMW435i クーペ Mスポーツ
このBMWはランフラット→ランフラット→ノーマルタイヤ→ノーマルタイヤという履歴を持っています。
ノーマルタイヤを履いてしまうとランフラットへ戻る気にはならないそうですが、
一番の理由はタイヤの価格だと言っています。
BMW承認のランフラットタイヤだと交換費用は軽く20万円オーバーですが、
リプレイス用のノーマルタイヤなら1/3くらいで済んでしまいます。
とくに現在履いているハンコックタイヤは高性能なのに格安で大満足なようです。
尚、新車装着のピレリP ZEROと次に履いたP ZERO PZ4は基本的に同系統のタイヤですが、
PZ4が全体的にブラッシュアップされた新型になります。
PZ4は2016年に登場したタイヤで、総合性能でP ZEROを上回っており、
これから購入するならPZ4をおすすめします。
車種 | BMW435iクーペ |
過去のタイヤ | PIRELLI P-ZERO (ランフラット) |
過去のタイヤ | PIRELLI P-ZERO PZ4 (ランフラット) |
交換前のタイヤ | DUNLOP SP SPORT MAXX RT2 (ノーマルタイヤ) |
現在のタイヤ | Hankook VENTUS V12 evo2 (ノーマルタイヤ) |
乗り心地 | ★★☆☆☆ → ★★★★☆ |
走行安定性 | ★★★★☆ → ★★★★☆ |
タイヤ価格 | ★★☆☆☆ → ★★★★★ |
タイヤ寿命 | ★★★☆☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ価格は★が多いほどお得感があるという評価です。
タイヤ寿命は走行距離比で残ミゾから判断しています。
メルセデスAMG E63S
これは現在、私が所有するクルマの一台なんですが、
お取引のあるWebメディア様の企画参加によって提供されたタイヤを履いています。
そちらのデータを記載することはできませんが、
1,000km走るごとに4輪の残ミゾを計測しており、
最終的に10,000kmまでのデータを提供することになっています。
タイヤ履歴としてはピレリのランフラットからブリヂストンのランフラットへ交換後、
ノーマルタイヤのブリヂストンポテンザS007Aに交換しています。
このクルマは重くパワーもあることから総じてタイヤ寿命が厳しく、
どんなタイヤもあまり長持ちするという感じはありません。
(AMGに限らず、最近のベンツは全般的にタイヤの減りが激しいです。)
新車時に装着されていたP ZERO PZ4など走行1万kmで限界値まで減ってしまっていました。
おそらくこのS007Aも1万kmはキツイのではないかと思います。
そしてこれはタイヤが悪いのではなく、タイヤに厳しいクルマのほうの問題だと思います。
車種 | メルセデスAMG E63S |
過去のタイヤ | PIRELLI P-ZERO PZ4 (ランフラット) |
交換前のタイヤ | BRIDGESTONE POTENZA S001 RFT (ランフラット) |
現在のタイヤ | BRIDGESTONE POTENZA S007A (ノーマルタイヤ) |
乗り心地 | ★★★☆☆ → ★★★★☆ |
走行安定性 | ★★★★☆ → ★★★★☆ |
タイヤ価格 | ★★★☆☆ → ★★★★★ |
タイヤ寿命 | ★★☆☆☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ寿命は走行距離比で残ミゾから判断しています。
ポルシェ911カレラ3.2
今となっては超高価で希少な空冷911ですが、
このクルマのオーナーは私の親しい友人で、18年くらい前に常識的な価格で買っています。
タイヤ履歴も豊富で、全部書いていたらキリがないほどです。
今回は交換前のタイヤと現タイヤだけ記載させていただきます。
尚、88年式の同車にポテンザS001はオーバースペックで、
ランフラットをやめたというより、
少しでも古い車体を労わりたいという気持ちもあったようです。
本当は往年のピレリP700などがあればそれを選びたかったみたいですね。
車種 | ポルシェ911カレラ3.2 |
交換前のタイヤ | BRIDGESTONE POTENZA S001 RFT (ランフラット) |
現在のタイヤ | BRIDGESTONE REGNO GR-XII (ノーマルタイヤ) |
乗り心地 | ★★☆☆☆ → ★★★★☆ |
走行安定性 | ★★★★☆ → ★★★☆☆ |
タイヤ価格 | ★★★☆☆ → ★★★★☆ |
タイヤ寿命 | ★★★★☆ → ★★★★☆ |
タイヤ寿命は走行距離比で残ミゾから判断しています。
ランフラットタイヤ 本当のメリット
ランフラットタイヤはどうしてもネガティブな評価が前面に出てしまいますが、
本当は大きなメリットのあるタイヤです。
問題は日本ではそのメリットを感じにくいというか必要とされないところがありますね。
そのため多くの方が以下のように評価してしまいます。
乗り心地が悪い
結局パンクするから一緒
タイヤが高い
どうがんばってもあまり良い言葉が並ばないようですが、
実はランフラットタイヤのメリットは高速走行中にバーストし難いというところです。
世界で初めてランフラットタイヤを純正採用したのはあのポルシェ959ですが、
採用理由は「パンクしても走れる」というより、
200km以上でパンクしてもクルマをコントロールできるタイヤということでした。
(デンロックタイヤと呼ばれていました。)
ノーマルタイヤで高速走行中にパンクするほど怖いことはありませんが、
ランフラットタイヤはこういうトラブルに強いです。
それが理由でドイツの高性能車はみんなランフラットタイヤを履いています。
日本の高速道路くらいの速度でもノーマルタイヤでバーストしたら横転することだってあります。
コントロールを失って壁に激突する事故なんかも起きています。
ランフラットタイヤなら事故を回避できる確率は高まるでしょうね。
日本人は時速50km時の乗り心地でタイヤを選びますが、
時速200km以上で走るドイツ人はやはりタイヤ選びの基準が違います。
さらに治安の悪い海外ではパンクしてタイヤ交換してたら襲われてしまう国もあります。
そんな国の人にとってはパンクしても走れるという安心感は絶大です。
でも日本だと感じにくいメリットですよね。
また、日本の道路の舗装率と路面コンディションの良さは世界トップレベルです。
そもそもパンクに遭う確率が低いですね。
そのため日本で走らせるクルマにはランフラットタイヤを選ぶ理由が限られてしまいます。
市販車初のランフラットタイヤの採用はポルシェ959ですが、
これにはダンロップが開発したデンロックという技術が使われていました。
デンロックは高性能ながら専用ホイールが必要なことからあまり普及せず、
通常ホイールで履ける現在のランフラットタイヤが主役に躍り出ています。
当時、グループCカーのポルシェ962Cはこのデンロックタイヤを履いて、
実際にルマンなどのレースで戦っていました。
パンクした962Cが10km以上走破して無事ピットに帰還できています。
あとがき
最近はアジアンタイヤを中心に高性能な安いタイヤが買いやすくなりました。
これらのタイヤはノーマルタイヤなので結果的に脱ランフラットを推進してるような感じもあります。
極端に価格の違うタイヤ同士の比較はフェアではありませんが、
ハイブランドの高性能タイヤ同士で比較してもやはりランフラットは高いです。
そうなると相当数の方が安くて実用上問題ないノーマルタイヤを選ぶのは自然の流れな気がします。
自動車メーカーやタイヤメーカーは安全性の観点からもランフラットタイヤを売りたいでしょうが、
なかなか普通の日本人には思いが届かないかも知れませんね。
ブログ村にはタイヤに関する有益な情報が溢れています。
是非訪れてみてください。
にほんブログ村
コメント