最近はシリコン洗車がちょっとしたブームになっています。
ネット上でもそのメリットを強調する記事やYouTube動画が散見されますが、
単純な疑問としてなぜ実力派のプロ洗車ショップは採用していないのでしょうか?
シリコンを使ったボディケアにはメリットもありますが、
実は少々危険なデメリットもあります。
今回はシリコン洗車が抱えている厄介な問題点を検証します。
シリコンの特性
シリコン洗車に使用されることが多いKF-96剤はとても安価です。
広く使われているカーコーティング剤の半額以下で入手可能であり、
手に入れるのも容易でとくに入手性の問題もありません。
そして、クルマのボディケアに向いた特性も持っています。
どんな特性を持っているんでしょうか?
粘度が安定している(温度変化に強い)
金属への悪影響が少ない
撥水性に優れている(ほぼ天然カルナバロウと同等)
シリコンというのは汎用性の高い化学合成物で、
潤滑剤としてだけでなく、化粧品などにも使われています。
つまり安全性が高いことがわかります。
そんなシリコンを使ったシリコン洗車には以下のようなメリットがあります。
シリコン洗車のメリット
シリコン洗車のメリット
◇ 洗車コストが安い
◇ 艶出し効果がある
◇ 撥水効果がある
◇ 小キズを隠せる
◇ 他物資と合成しやすい
◇ イオンデポジット、ウォータースポットに強い
洗車コストが安い
シリコン剤の価格が安いので洗車コストも安くなります。
正確にはコーティングにかかる費用が抑えられるということですね。
安価なコーティング剤と比較しても1/3くらいのコストですし、
高価なコーティング剤との比較なら1/10ほどの費用しかかかりません。
艶出し効果がある
シリコンの被膜はオイル成分なのでしっとりした感じの艶が出ます。
思いっきり艶出し効果を売りにした製品には敵いませんが、
十分な艶を得ることができます。
見た感じが濡れたようなしっとり感になるというとわかりやすいでしょうか。
撥水効果がある
シリコン被膜が生み出す水滴の接触角は90~110度であり、
これはカルナバロウに匹敵します。
水滴の接触角というのは数字が大きいほど玉のような水滴となるので、
超撥水の特性を持つコーティング剤なら150度以上もあります。
シリコンはそこまでの撥水効果は得られませんが、
クルマのボディに必要十分な撥水効果を得ることは可能です。
ちなみに親水の場合はこれが5~90度です。
これはもうほとんど水滴にならず、水がべちゃっとしてますね。
小キズを隠せる
透明なシリコンオイルは小さな傷の隙間に浸透し、
クルマの場合だと細かな洗車キズなどを目立たなくしてくれる効果があります。
ただ、傷そのものを消してくれるわけではありませんので勘違いしないようにしましょう。
隠せるのはあくまでも洗車直後だけです。
他の物質と合成しやすい
シリコンは安定性の高い化学物質なので他物質と混ぜる危険性は少ないです。
その組成は合成高分子化合物で、原子の結合性が高く、原子間の距離も広く、
その結合角も大きいという特徴を持っています。
簡単に説明すると他の成分を持つケミカル剤と混ぜやすいですね。
この特徴を生かしてシリコンの弱点を他のケミカル剤で補うことができます。
シリコン洗車を推奨している方はこの特性をアピールしていることが多いですし、
実際に他の製品と同時に施工して高い効果を得ているようです。
イオンデポジット、ウォータースポットに強い
シリコン洗車はボディ表面をシリコン被膜で覆いますので、
イオンデポジットやウォータースポットの発生に対し一定の効果が期待できます。
多くのシリコン洗車推奨者もこれを最大のメリットに挙げてますね。
ただ、これは絶対確実ではありませんので注意は必要ですし、
仮に効果があるとしても定期的な施工は必要です。
シリコン洗車のデメリット
シリコン洗車のデメリット
◇ 耐久性や持続性がない
◇ 保護被膜にならない
◇ ボディ表面が汚れやすくなる
◇ 塗装面に浸透するとコーティング困難になる
◇ その他のデメリット
耐久性や持続性がない
シリコン被膜は硬化しませんので耐久性や持続性がありません。
激しい雨などに遭遇するとあっけなく被膜が流れ落ちてしまいます。
定期的な施工が必要ですね。
保護被膜にならない
シリコン被膜は硬化しない性質を持っているので保護被膜にはなりません。
これはワックスと同じようなものだと理解するとわかりやすいと思います。
つまり硬化型コーティング剤の代わりにはならないということであり、
ボディ表面を保護する効果はありません。
(硬化型コーティング剤にもそれほどの保護効果はありませんが…)
ボディ表面が汚れやすくなる
シリコン洗車の大きなデメリットがこれです。
これもワックスをイメージすると理解しやすいと思います。
シリコン被膜というのは硬化せずボディ表面に塗られた状態なので、
細かな埃が付着しやすいです。
塗装面に浸透するとコーティング困難になる
これはかなり危険度が高いです。
シリコン被膜は塗り重ねると塗装面に浸透してしまうので、
後から他のコーティングを施工したくても難しくなります。
つまり浸透状態が強烈で、簡単には落とせなくなってしまうのです。
また、塗装の合わせが難しくなったり、パテが固着しなくなり板金修理が困難になります。
この危険性を理解していない施工推奨者が多い気はしますね。
ちょっとした擦り傷修理で板金屋に修理入庫したクルマがありました。
キズ自体は大したことはありませんでしたが、
シリコン被膜が塗装面に浸透してしまっていたため、
塗装の合わせができず、屋根まで含むかなり広範囲を塗り直す修理が必要でした。
ただの板金修理なら5万円くらいの修理だったそうですが、
この広範囲の塗装が発生したため最終的に28万円もの修理代になってしまったそうです。
その他のデメリット
シリコンには石油系溶剤タイプと無溶剤タイプの二種類があります。
石油系溶剤タイプは塗装やコーティングを溶解してしまう危険性があるのでクルマには使えません。
うっかり間違って使ってしまうと厄介なことになるので注意しましょう。
シリコン洗車最大のデメリット
ここまでシリコン洗車のメリットとデメリットを見て来ましたが、
実はシリコン洗車にはちょっと気をつけないといけない注意点があります。
それはシリコンが持つ「低分子シロキサン問題」です。
多くの自動車用シリコン製品はこの低分子シロキサン問題の対策品が使われてますが、
この問題を理解していない人が「シリコンならなんでもいいじゃん」とうっかり使用してしまうと大変なことになります。
低分子シロキサン問題とは?
シリコンはケイ素と酸素が交互に結合してポリマー状となり、
極めて安定した性質となります。
これ自体はシリコンの大きなメリットなんですが、
この状態で熱を浴びるとガスを発生させてしまいます。
この揮発したガスがクルマの電気系統に入り込むと通電不良を引き起こしてしまいます。
早い話しが電気系統の故障を誘発してしまうのです。
そのため、自動車メーカーなどはかなり慎重にシリコンを扱ってますが、
そんなことを知らない一般人は平気で熱源のある付近に施工してしまいます。
安易にシリコンを使った洗車をすると危険なことは間違いなく、
その使用には正しい化学的知識が必要になりそうです。
まとめ
シリコン洗車にはこのようにメリットとデメリットがあります。
その特性をしっかり理解してメリットだけを上手く活用できれば問題ありませんが、
怖いのは「ボディの塗装を傷める危険がある」なんてレベルではない危険性があるところで、
それをしっかり理解せず使ってしまうと危ないですね。
シリコン洗車を推奨するも否定するも個人の自由ですが、
推奨する人でこういう危険性まで説明している人がほとんどいないのは気になります。
私は明確に否定はしませんが、多くの板金屋さんなどは「絶対使うな」とは言ってますね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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