現在、輸入パーツの入荷が絶望的に厳しくなっています。
他人ごとのように考えていると我が身に降りかかったときに大変困ってしまいます。
今現在、一体どんな問題が起きているのでしょうか。
今回はベンツのアキレス腱ともいわれるNOxセンサーを例に話しを進めてみようと思います。
国内在庫ゼロ、本国在庫ゼロという現実
輸入車のパーツが入荷しないと聞いてどんなクルマの問題だと思われたでしょうか?
生産数の少ない希少なスーパーカーのパーツ?
全然違います。
どこにでも走っているベンツ、BMW、ルノー、プジョー、ボルボ、フィアットなどなど、
極めて実用的なクルマのパーツの話しです。
しかも、生産数の少ない高性能モデルの特殊なパーツではなく、
普通に走るのに必要な基幹パーツが入荷しないのです。
そんな問題に直面した当事者は「ウソでしょ?」という驚愕の状態です。
メルセデスベンツに大挙発生する厄介なトラブルの一つにNOxセンサー故障というのがあります。
これが壊れるとエンジンチェックランプが点灯して警告が表示されます。
このパーツは本当に壊れやすく、何度か対策パーツに変更されてますが、
相変わらずすぐ壊れてしまいます。
ベンツを愛する人でもこのトラブルの多発には激怒してる人が多いですね。
ちなみにこのパーツは一個約10万円もしますが、
運の悪い人だと2年に一回くらいの頻度で故障を経験しちゃいます。
(もちろん運よくまったく経験しない人もいます。)
このセンサーはマフラーの本数分装着されているので、
多くのメルセデスベンツが複数個装着しています。
前後で合計4~6個とか使っているモデルもあります。
その複数のセンサーが同時に壊れるなんて確率は低いですが、
正規ディーラーでは予防整備という意味でもセット毎の交換を勧めて来ます。
つまり約20~40万円も修理にお金がかかるわけです。
こんな故障が2年ごとにやって来たら誰だって発狂もんだと思います。
このNOxセンサーが壊れるとエンジンチェックランプが点灯しちゃいますので、
つまり車検に通らないということになります。
しかも高度に電子制御の進んだ現代のクルマで点灯放置すると、
場合によってはエンジンが危険と判断して緊急作動モードになってしまい、
パワーダウンしてしまいます。
パワーダウンしても走れないことはないので放置してる人もいますが、
車検となると手をつけないわけにはいきません。
とても高額な修理費用がかかるわけですが、
車検を通さないと公道を走れなくなってしまうのでお金を工面するしかありません。
車検代+修理費用なので痛い出費です。
でも、財布が痛いだけならまだいいんです。
厄介なことにこのNOxセンサーが入手困難なんです。
驚くべきことに2022年8月末、国内在庫ゼロ、本国在庫ゼロという事態を迎えました。
頻繁に壊れるセンサーパーツが手に入らないなんて考えられない話しです。
おそらく今現在もNOxセンサーの入荷を待っている故障車がたくさんいるんじゃないかと思います。
余談ながらこのNOxセンサー故障はベンツに発生することで有名ですが、
もちろんベンツ以外のクルマにだって発生します。
ただ、とくにベンツには多い故障ですね。
NOxセンサーはなぜか日本ではアッセンブリでしかパーツが販売されてません。
海外では基盤部分やセンサー部分などが分けて販売されています。
だから故障部位だけを交換する修理が可能です。
故障個所が特定できるなら海外通販で必要箇所だけのパーツを取り寄せましょう。
正規品を使いながらも修理を安く行うことができます。
社外品パーツはないのか?
このNOxセンサーですが、豊富な社外品が存在します。
純正並みのクォリティの製品もあれば、
安いけどすぐ壊れる粗悪な製品もあります。
正規ディーラーはもちろん純正パーツしか使用しませんが、
一般の整備工場もできるだけ安価な社外品は使わないようです。
交換してもすぐ壊れてしまうからです。
経験上、修理代が高くなっても粗悪な社外品を勧めない整備工場は信頼性が高いと思います。
ちなみに2022年9月現在、純正パーツの価格は一個/約9.5万円ほどです。
これが純正と中身が同じOEM品(ベンツの名前が入っていない製品)で約5~7万円、
完全な社外品で2~5万円くらいでしょうか。
ついつい2万円の社外品に手を出したくなりますが、
かなりの確率ですぐ壊れます。
まさしく安物買いの銭失いになるので注意しましょう。
半導体不足の影響
なぜこんな異常事態を迎えているのでしょうか?
これは世界的な半導体不足が原因です。
自動車メーカーの保守体制にも大きく影響を与えているといえます。
そして問題は純正パーツの入手困難だけにとどまらず、
優良な社外品メーカーもパーツ製造を停止してしまっているという二次問題まで発生しています。
「純正パーツが手に入らないなら社外品で…」というわけにもいかない状況なんです。
こんな事態は過去にもあまり前例がなく、深刻な問題となっています。
もしかするとそう遠くない将来に安価な社外品パーツは入手困難になってしまうかも知れません。
在庫ゼロは本当なのか?
ここまでお読みいただいた方はちょっと疑問に思ったのではないでしょうか?
「本当にそんなセンサーごときが在庫ゼロ?」
結論からいうと流通しているパーツはあります。
実際、アマゾンや楽天などを調べればNOxセンサーはたくさん販売されています。
中には純正パーツと称するものだって売られています。
個別パーツの真偽はわかりませんが、おそらく本当に純正新品パーツだと思われます。
(精巧な偽物もたくさん流通しています。十分注意しましょう。)
これが自動車整備業界の難しい点なんです。
自動車整備工場は修理に必要なパーツを部品会社に発注しますが、
それはネット通販でパーツを売っているお店とは違います。
困ったことに優秀で優良な整備工場ほどパーツの入手ができなかったりします。
流通ルートが違うんです。
優良店は怪しげなルートのパーツは使いません。
(すべてのネット店が怪しいというわけではありません。)
エンドユーザーに部品を売っているお店がどんなルートで仕入れているのかわかりませんが、
ベンツの場合、正規ルートはメルセデスベンツ日本が輸入したパーツとなります。
しかし、ネット通販してるお店の多くはこういう正規ルートから仕入れてません。
正規ルートにパーツが枯渇する問題が起きると、
真っ当な整備工場は「パーツ入手困難」となってしまいます。
ネット通販でも品薄を反映してか10万円超えが増えて来てます。
今ならまだ比較的安価で入手可能かも知れません。
パーツがなくて車検を通せない
現在は車検を通すためにパーツが必要なのに、発注してもパーツが手に入らなくなっています。
少し前までなら仮に部品会社の倉庫にパーツの在庫がなくても、
早ければ数日で製造元や輸入元から入荷するというのが一般的でした。
だからパーツがなくて車検が通せないなんてことはあり得ませんでした。
しかし最近は多くの部品会社で在庫なしが常態化し、
入荷まで数ヶ月待つことも珍しくなくなってしまっています。
それどころか入荷の目途が立たないパーツまで出て来ています。
そのような状態なので故障を直せず車検が通せないクルマが出てしまいます。
どこか遠い外国の話しのように思われているかも知れませんが、
そうではなく日本各地の整備工場で多発している問題なんです。
一時的に社外品パーツを使用する?
では整備の現場ではどうしているのでしょうか?
これは正規ディーラーでは絶対に使えない手法ですが、
一般の整備工場では一時的に社外品パーツを使って(チェックランプを消して)車検を通過させ、
純正パーツが入荷したら交換しています。
もちろんそのまま社外品を装着したままのクルマだってあります。
実際、私のよく知る欧州車専門の整備工場では春先ころからこの方法を採用しています。
(現在は中古の純正パーツを何個か確保して対処してますが、当初は社外品を使ってました。)
しかし、すべての型番のパーツを準備することは不可能なので、
車検を通せずやむなく整備を中断しているクルマが何台かあるようです。
今はこのような状態なので、緊急事態に備える意味でもオーナー自ら危険な交換パーツは確保しておいたほうが安全です。
この手の話しはレアな旧車の世界の話しでしたが、
今は現行モデルでも同じようにパーツ入手難を迎えてしまっています。
もちろん車検通過だけのために適当なパーツを組み込み、
車検取得後にまた外すような行為はよくありません。
オーナーも面倒ですし、整備工場だって面倒です。
しかし、パーツがなくて車検を通せないなんてことは現実的に受け入れられないと思います。
車検は一ヶ月前から受けることができます。
些細な対処法ではありますが、余裕を持って入庫するようにしましょう。
従来の感覚で期限ギリギリに入庫すると、
必要な補修パーツが確保できず数ヶ月車検を受けられないなんて事態もあり得ます。
まとめ
今回はベンツのNOxセンサーを例に挙げましたが、
国産車も含めて多くのクルマでパーツが手に入らない問題が多発しています。
しかも困ったことにすぐ解決できる問題でもなさそうです。
裕福な方はお金で解決するから大丈夫と思っているかも知れませんが、
そういう問題ではなさそうです。
お金を出してもパーツそのものが手に入らないのです。
「私は正規ディーラーの上客だからディーラーになんとか対処させる」
なんて思っている人もいるかも知れませんが、
そのディーラーがパーツの入手に苦戦しているのが現状です。
今はパーツ供給が安定するまで自分でもある程度の備えをしておくことが必要かも知れません。
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