中古車でクルマを買うと多少は想定外の出費に見舞われるものです。
それが許容できる範囲ならいいんですが、そうでない場合は打撃も大きいです。
今回は実際にあった失敗談を紹介してみたいと思います。
みなさんのクルマ購入の参考にしていただければ幸いです。
収入に見合わないポルシェ911を買ってしまった
22歳のY氏は大学卒業直後に念願だった外車購入に踏み切ります。
当時の手取りは諸々引かれて18万円くらい。
その頃の主な支出は以下のような感じでした。
実家へ毎月5万円
平均遊興費5万円
つまり毎月8万円くらいのお金が浮いていました。
そこでY氏は月5万円くらいまでのローンなら大丈夫と判断してクルマ購入を決意。
手元にあった貯金50万円ほどを頭金にして念願だったポルシェ911購入へと踏み切ります。
今では考えられませんが、当時は探せば200万円台で964型911が売られていました。
Y氏はあちこち探した結果、280万円ほどで販売されていた中古911を見つけます。
91年式で色はガンメタ、走行距離12万Km、長期ローンを組めば購入可能な911でした。
試乗してその場で購入を決断
911どころか外車を運転したことのなかったY氏は試乗に苦戦します。
慣れない左ハンドル…試乗する前は冷静にエンジンの音やブレーキの状態を確認しようと意気込んでましたが、
いざハンドルを握ると走らせるので精一杯でそんな余裕はまったくありません。
試乗時間は10分ほどあったそうですが、
緊張から早く販売店に戻りたい気持ちでいっぱいだったそうです。
そして、舞い上がった状態で「買います」と言ってしまいました。
納車されて夢見心地な毎日の始まり
購入から三週間ほど経ってその911はY氏の元へ納車されました。
クルマは綺麗で快調そのもの、嬉しくて毎日帰宅するとドライブに出かけていたそうです。
ポルシェ911のようなクルマは仮に安い個体であってもなんとなくそれらしく走ってくれます。
Y氏もとくに問題を感じることなく「さすがポルシェ」と思っていたそうです。
嬉しくて夜な夜な高速道路へ走りに行ってはPAで休憩する毎日を送っていました。
そんなある日、SNSで知り合ったポルシェオーナーさんに誘われて長距離ドライブへと出かけます。
前日に洗車し、ガソリンも満タンにして準備万端でドライブに出かけました。
合流を約束したPAで数台のポルシェたちの中に混ざっていったY氏でしたが、
クルマから降りた瞬間、何人かの人たちから「Yさん!煙吐いてるよ」と指摘されてしまいました。
愛車は快調だとばかり思っていたので思ってもいない一言でした。
本当に快調な911を知ってしまう
煙のことはショックだったものの、アイドリング時にはとくに煙を吐くこともなかったため、
気を取り直して先輩ポルシェオーナーさんたちとポルシェ談義に興じていたY氏に願ってもない一言がかけられました。
「Yさん、良かったらちょっと私が運転してみましょうか?」
声をかけてくれたのは同じ964型の911に20年近く乗っているA氏でした。
あまり他人様のクルマを運転することはないそうですが、
あの煙が気になってしまい、試乗を申し出てくれました。
当然ながらY氏はA氏の911を運転することになります。
クルマを交換していざ出発してみると…
全然違う!
Y氏は思わず大声で叫んでしまったそうです。
そう、Y氏は完璧にメンテナンスされたA氏の911で初めて快調な911を知ったのです。
それはエンジンの吹けもブレーキの効きもまったく違い、
直線性やコーナーでの挙動はもちろん、普通に走った乗り心地すらもまったく別物でした。
最悪なコンディションだったことが判明
短いクルマ交換を終えてA氏が一言…
「Yさん、これちょっと厳しいクルマだと思いますよ」
そう、めちゃくちゃ程度の悪いクルマだったことが判明した瞬間でした。
頭の中が真っ白になったそうです。
ポルシェ専門店での総点検実施
後日、A氏の紹介を受けて有名なポルシェ専門店を訪ねることになり、
そこで初めて本格的な点検を受けたY氏の911…
整備士さんから点検結果を聞くことになりますが、
それは衝撃的な内容でした。
「Yさん、ウソは言えないのではっきり言いますが、状態が悪すぎます」
予想したとおりの言葉だったのでショックは受けなかったものの、
修理代の話しになったところで気絶しそうになります。
「一通りやろうと思うと、約400万円ほどかかると思います」
400万円!
Y氏の911はエンジン、ミッション、クラッチ、ブレーキ、サスペンションに問題があることが判明。
とくにエンジンはオイル漏れが酷く、深刻な圧縮漏れも起きていました。
そんな状態でも出力ダウンはほとんどなく、
それゆえにパワー感はなかなかのものだったのでエンジンは大丈夫だとばかり思っていたY氏でした。
修理できないほど高額の見積書
Y氏の手にはとても捻出できる金額ではない見積書がありました。
そう、重大な決断が迫られます。
購入時のローンで精一杯だったY氏にはそれ以上の修理代なんて出せるはずがありません。
まして400万円…
手放さざるを得ない状況でした。
致命的な箇所だけに絞って修理すれば費用を下げることは可能でしたが、
それでも250~300万円は必要になりそうなコンディションでした。
背伸びしてギリギリの予算で買ったY氏にはもうどうしようもない現実でした。
ポルシェ専門店からかかって来た一本の電話
傷心のY氏でしたが、ある一本の電話が彼の心を癒してくれます。
電話は点検してくれたポルシェ専門店店長からでした。
「Yさん、よかったらあのクルマ引き取りましょうか?」
売却するにしてもあの状態では足元を見られると危惧していたY氏にはありがたい申し出でした。
売却額は150万円。
まともなコンディションであっても200万円ほどだった時代です。
これほどありがたい話しはありませんでした。
幸いY氏の911はボディのコンディションは良好だったので、
お店で費用をかけて修理しても商品になりそうとのお言葉だったそうです。
もちろんY氏は複数の他店でも査定してもらいました。
査定額はどこも約120万円。
同様に機関部のコンディションの悪さを指摘されての数字でした。
ポルシェ911との別れ
Y氏の911はたった半年ほどで彼の元から旅立ってしまいました。
売却したお金でローンを整理したものの、それでも約100万円の残債が残ったそうです。
Y氏のケースは典型的な外車あるあるの失敗事例です。
当時の964型911カレラ2の相場は極上車で約500万円前後、
平均的には350万円前後で取引されているのが普通でした。
そんな中で300万円を切る価格だったクルマがまともな状態のわけがありません。
ポルシェ911のようなクルマは焦って買ったら絶対にダメです。
何台も見て触って乗って買わないと失敗します。
あれから約10年、現在Y氏は997型の911カレラに乗っています。
あの大失敗を教訓として、現在の快適なポルシェライフを手に入れたのです。
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