クルマのガソリン量はタンク満タン派と常時半分派という二派に分かれる傾向にあります。
どちらがいいのか昔から議論されてますね。
それぞれにメリットとデメリットがありそうです。
ネット上にもさまざまな検証記事が溢れてますが、
今回はそんな諸説の中身を検証してみたいと思います。
ガソリン量が少ないと燃費がいい?
これは昔からタンク半分派がメリットとして挙げています。
ネットの情報でもそう書いている記事が多いです。
実際はどうなんでしょう。
理論的には燃費が良くなるという判断で間違っていないと思いますが、
実体験記事など読んでみると「燃費が良くなった」という人と「変わらなかった」という人がいます。
実データで燃費が良くなった人とその効果が出ていない人がいるのはなぜでしょう?
車重が10Kg軽くなると燃費はリッターあたりで0.1~0.2kmほど改善されるといわれています。
もちろんこれは理論値としての話しですが、
60Lタンクのクルマが燃料満タンにせず半分だけにすると約22Kg軽くなるので、
その理論に当てはめるとリッターあたり200~400mくらい余分に走れるということになります。
多くがこういう考え方を基準にして情報記事としてまとめていますが、
実はこの考え方はある重要なポイントを盛り込んでいません。
極端な話しをすると車重10Kgのクルマならそのとおりという話しであって、
そんなに単純な話しではなさそうです。
理論燃費というのは実車には当てはまらない
クルマには動力源としてエンジンが搭載されています。
1Lの燃料でどれほどの運動エネルギーを作り出せるかはエンジンによって違いがあります。
もうおわかりだと思いますが、10Kg軽くなると…という単純な話しではありません。
重さだけで算出した理論値はクルマのエンジン特性などを加味していないので無理があります。
もっとわかりやすい例をあげると車重1,600Kgのクルマがあったとします。
当然ながらその重さの車両を動かすのに十分な出力を持つエンジンを積んでいるはずです。
そのエンジンにとって20Kgの重量増は小さなエンジンが受けるほどの負荷にはなりません。
燃費が良くなる説はこれを無視していることが多いです。
車重が1,620Kgだろうが1,640Kgだろうがエンジンの運動エネルギー量は誤差範囲です。
つまり必要な燃料量も誤差範囲でしかなくなります。
車重の軽い軽自動車や小型車であれば燃費改善効果が得られるかも知れませんが、
普通車以上のクルマではその効果は限定的です。
燃料を半分にした程度で得られる軽量化では大きな燃費改善は難しいでしょう。
「燃費が改善された」と感じている人も給油量を減らした効果と思っているだけで、
本当の理由は違う可能性もありそうです。
搭載燃料が軽いとクルマへの負荷が減る?
燃料半分派の人がクルマへの負荷軽減まで意識しているかはわかりませんが、
10~20Kg軽い状態で何年も走り続ければクルマへの継続的負荷は軽減されそうです。
つまり燃費改善効果とは別にサスペンションやタイヤへの負荷が軽くなる可能性はあります。
クルマはGを受けながら走る乗り物なので20Kg増だけの話しでは済みません。
クルマは走ると荷重がかかりますので、
実際の車体には20Kg以上の負荷が圧し掛かることになります。
クルマはその重さという負荷をシャシ全体で受け止めるわけですが、
厳密には路面に接するタイヤやサスペンションがその負荷を直に受けることになります。
ここへの継続的な負荷は何らかのダメージに繋がりそうです。
あらためてメリット、デメリットを整理
ここであらためてガソリン量によるメリットとデメリットを整理してみましょう。
ガソリン半分のメリット
燃費が良くなる?
理論値ではありますが、確実にエンジンへの負荷が軽減されるため、
燃料消費量は減ります。
但し前述したとおり、車重が重く、エンジン出力も大きなクルマでは極めて限定的です。
クルマが100~200Kg近く軽くなれば効果を実感できると思いますが、
20Kg前後の軽量化では誤差範囲にしかなりません。
同じクルマでもグレードによって10~50Kg前後の重量差はあります。
オプション一つ装着しただけですぐ10Kgくらいは重くなったりもします。
しかし、自動車メーカーが発表する燃費データはその程度の重量差では同数値を表示しています。
計測誤差範囲に収まってしまうからです。
燃費が良くなるという理論自体は間違いではありませんが、
実車ではなかなか難しいというのが答えではないでしょうか。
足回りへの負荷が軽減される
クルマのサスペンションはかなりの運動エネルギーを受けて稼働していますが、
その中でも直接負荷を受けているパーツにはとても大きな荷重がかかっています。
スプリングやショックアブソーバー、バンプラバーなどです。
これらのパーツは消耗品で、一定の距離を走行したら交換が必要となります。
足回りのパーツは車重が1Kgでも軽いほうが負荷が少ないことは間違いなく、
常に20Kgくらい軽い状態で何万キロも走行すれば蓄積するダメージ量は少なくなりそうです。
クルマのスプリングは10年、10万キロあたりが寿命といわれていますが、
実際はそんな距離や使用時間で交換する必要はありません。
スプリングだけが負荷を受けているわけではないことと、
素材として使われるSUP材は破断するような劣化をしないからです。
普通車であれば廃車になるまで無交換のクルマが多いと思います。
クルマの挙動が俊敏になる
クルマが軽ければ速く走れます。
それが例え10~20Kgでもクルマの運動性能には影響を与えます。
ただ、それはスポーツ走行するときに感じられるメリットで、
普通に法定速度を守って走るような状況ではメリットになるかどうかわかりません。
しかし、どんなクルマでも満タン状態での挙動より、
ガソリンが減っているときのほうが身軽で俊敏になります。
あの感覚が常に欲しい人なら大きなメリットになるのではないでしょうか?
ガソリン半分のデメリット
ガソリン価格の安い日を選べない?
常にガソリンを満タンにしている人はタンク内の残量にゆとりがあるため、
ガソリン価格の安い日を選んで給油することが可能になりますが、
もともと半分くらいしか入れない人だとそんな余裕は生まれないかも知れません。
常に燃料が少ない状態で走るため走行可能距離も短くなっています。
毎回少なめの給油といっても「今日は5L、明日は8L」なんて小刻み過ぎる給油は非現実的です。
燃料ポンプを傷めやすい
現代のクルマは燃料ポンプ本体をタンク内に内蔵していますが、
半分くらいしかガソリンを入れてないタンクではそのポンプ本体がガソリンに沈みません。
燃料ポンプはガソリンに浸されることで冷却されますので、
ガソリン量が少ないと、燃料ポンプが過熱してしまい寿命を短くしがちです。
実際、燃料ポンプ故障を起こすクルマは満タンにしないクルマが多いようです。
それがあるからなのか、私の親しい整備士にタンク半分派はほぼいません。
エンジンを壊しやすい?
気温の低い冬場はあまり関係ない話しだと思いますが、
夏場はガソリン量が少ないとタンク内のガソリンが異常に熱くなってしまいます。
ガソリン容量が少ないので熱を放熱しにくくなってしまうのですが、
実はガソリンが熱いとエンジンの燃料系統もガソリンで冷やせなくなってしまいます。
その理由もあってやはり親しい整備士はガソリンを少量にしておくことを避けているようです。
結露でタンク内に水が溜まりやすい
ガソリン量が少ないとタンク内に空間ができるので、
冬場は結露から水が溜まりやすくなりますね。
昔のクルマは金属製タンクが多いので注意が必要です。
現代のクルマの燃料タンクは樹脂製が増えているので錆に直結する恐れはなくなっています。
ちなみに水がガソリンに混入することを恐れる人がいますが、
結露で生じる程度の水量ならほとんど問題ありません。
むしろ水抜き剤なんか投入しないほうがいいです。
水抜き剤はイソプロピルアルコールを主成分としていますので、
ゴム製の燃料ホースなどを傷める恐れがあります。
ただ、長期間動かさないクルマの場合は適量を投入して水分を除去したほうがいいです。
災害時に困る
これはもう説明不要ですね。
大きな災害があったときはガソリンスタンドで給油ができなくなります。
そんなときに「満タンにしてあれば…」という経験をした人はたくさんいます。
まとめ
多角的に検証してみると常時ガソリン半分で乗るメリットはほとんどないですね。
少なくともクルマにはデメリットのほうが多そうです。
今回はガソリン量の問題を検証してみましたが、
ほとんどの方がタンク半分状態にメリットが少ないことはご存知なようです。
このテーマ、昔は真剣に議論されてましたが、
今は満タンにするタイミングはいつがいいのかを議論する人のほうが多そうです。
しかし、これもある程度は結論が出ています。
基本的にガソリンは満タンで乗るようにして、
半分くらいまで減ったところでまた満タンに給油するのが一番良いみたいですね。
少なくとも「満タン→ガス欠寸前になったら給油」よりは効率が良く経済的なようです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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