姿カタチの似たFIAT 500とABARTH 595ですが、
ご存知のとおりABARTH 595はFIAT 500をベースとしたハイチューンなクルマで、
そのパフォーマンスはFIAT 500の比ではありません。
確かに外見は似てるものの、中身はまったく別のクルマといえます。
価格も性能もまったく違うこの両車なので、
購入候補として迷う人なんてまずいないと思いますが、
今回はあえて比較をしてみたいと思います。
フィアットとアバルトはどういう関係?
この両社の関係をBMWとアルピナや、
ポルシェとルーフの関係に例えることがありますが、
はっきりいってまったく違います。
そんな高級高性能なクルマたちとの比較は適切だとは思いません。
フィアットとアバルトの両社はともに大衆メーカーです。
ただ、ともに人気のあるクルマであることから、
そこらの実用大衆小型車とも違います。
(FIAT 500はイタリアでは完全な実用大衆車ですが…)
少なくとも日本ではちょっとオシャレなイタリア製小型車として認識されており、
それぞれに熱心なファンがいて、外車ゆえに決して価格も安くはないという存在でしょうか。
そんなクルマなので、国産車に明確なライバルがいるかといえば難しいですね。
つまり、ちょっと個性ある変わったクルマなんだと思います。
そんなフィアットとアバルトですが、
今回は性能などを比較するのではなく、魅力とか人気を比較してみたいと思います。
性能なんかアバルトのほうが上に決まってますからね。
FIAT 500 TwinAirとABARTH 595のスペック比較
エンジンパワーなどはABARTH 595のほうが優れているのはあきらかですが、
それも含めて一応諸元を比較してみましょう。
FIAT 500 TwinAir | ABARTH 595 Competizione | |
全長 | 3,570 | 3,660 |
全幅 | 1,625 | 1,625 |
全高 | 1,515 | 1,505 |
車重 | 1,040Kg | 1,120Kg |
乗車定員 | 4名 | 4名 |
ホイールベース | 2,300 | 2,300 |
トレッド前/後 | 1,415 / 1,410 | 1,410/1,400 |
エンジン | 直列2気筒 SOHCターボ | 直列4気筒 DOHCターボ |
排気量 | 875㏄ | 1,368㏄ |
最高出力 | 85ps/5,500rpm | 180ps/5,500rpm |
最大トルク | 14.8Kgm/1,900rpm | 25.5Kgm/3,000rpm |
駆動方式 | FF | FF |
トランスミッション | 5速デュアロジック | MT/5速MTA |
ブレーキ前/後 | ディスク/ドラム | ベンチレーテッドディスク /ディスク |
サスペンション | マクファーソンストラット /トーションビーム | マクファーソンストラット /トーションビーム |
燃費(WLTCモード) | 19.2km/L | 13.2km/L |
荷室容量 | 185L | 185L |
タイヤサイズ | 185/55R15 | 205/40R17 |
最小回転半径 | 4.7m | 5.4m |
販売価格(税込) | 300万円 | 467万円~ |
当然ながらベースが同じクルマなので、
表記上の基本形式なんかはよく似てることがわかります。
しかし、問題は中身です。
例えばサスペンションの形式は同じですが、
実際はまったく別物で、ストロークも硬さなども違います。
次に中身の違いを見てみましょう。
ボディサイズが違う
基本が同じ車台の両車ですが、サイズが微妙に違います。
この違いは前後バンパーの形状が違うからです。
よく似たクルマ同士ですが、顔つきはあきらかにFIAT 500のほうがかわいいですね。
ABARTH 595はずっと凶暴で戦闘的な顔つきをしています。
かわいらしさではFIAT 500の圧勝じゃないですかね。
エンジンが全然違う
FIAT 500には0.9Lターボエンジン以外に1.2LのNAエンジンもありますが、
それを含めてもエンジンはまったく別物です。
FIAT 500は最強パワーを誇るTwinAirでも85馬力しかありません(1.2は69馬力)。
エンジンパワーに関しては比較にもならずABARTH 595の圧勝ですね。
ただTwinAirの面白さがアバルトのエンジンにあるかといわれると難しいと思います。
これは私個人の意見ですが、アバルトエンジンの代わりはいくらでもありますが、
TwinAirの2気筒エンジンの代わりは世界中探しても多分ないですね。
トランスミッションの違い
FIAT 500には有名なデュアロジックが搭載されてますが、
ABARTH 595のミッションはどうでしょうか?
実はこの両車のミッションはともにATモード付5速シーケンシャルミッションと書かれています。
カタログだけ見ると同じミッション?と勘違いされやすいですが、
当然ながら中身は別物です。
たまにアバルトのMTA(シーケンシャルミッション)はデュアロジックの強化版と解説されていますが、
正確にいうとそれも違います。
基本機構は確かに同じですが、細部の機構は異なっています。
耐入力トルクも違いますし、変速スピードも違います。
ちなみに単価はデュアロジックが約40万円なのに対してMTAは約60万円ほどでしょうか。
トランスミッションに勝ち負けなんてありませんが、
アバルトMTAのほうが高価で精巧なミッションといえます。
また、ABARTH 595は一部のグレードを除いてマニュアルミッションも選べます。
とくに左ハンドルの高性能MT車なんて今や完全に絶滅危惧種で、
他にはポルシェの高性能スペシャルモデルくらいしかないんじゃないでしょうか。
しかもポルシェの場合はガチにタイムを競うような高性能モデルはPDKなので、
最高性能版にMTを用意してくれてる左ハンドル車はABARTH 595くらいしかないような気がします。
余談ながら外国製のクルマでも日本で乗るからには右ハンドル車のほうが向いてると思いますが、
ことABARTH 595に関しては左ハンドル車のほうがいいかも知れません。
少なくともMT車の場合は左ハンドル車じゃないと足元スペースが狭くて乗り難いです。
燃費の違い
エンジンやパワーが異なるので燃費も全然違うわけですが、
これは比較にならないくらいFIAT 500のほうが優れています。
燃料タンク容量はともに35Lですので、満タンでの航続距離も違います。
厳密に比較したデータはありませんが、
おそらく実燃費で6km/Lくらい違うのではないでしょうか?
FIAT 500は満タンで200Km近く余分に走れると思います。
サーキット1周の速さでは相手にならないFIAT 500ですが、
ルマン24時間レースみたいな競技なら燃費の良さでABARTH 595を圧倒できるかも知れません。
(当たり前の話しですが、本物のルマン24時間レースは速くて燃費も良くて壊れないクルマでなければ勝てません。燃費性能だけで勝てるような甘いレースではありません。)
最小回転半径の違い
外見はよく似た両車ですが、実は一番の違いは回転半径です。
軽自動車並みに小回りの効くFIAT 500に対して、
ABARTH 595は小回りできないどころか、
クジラの方向転換?って感じるくらいに小回りできません。
ABARTH 595は国産ミニバンと同じくらいの最小回転半径ですが、
それらのクルマとは全長が1m近く違うはずです。
だからまるでリムジンを運転してると思えるくらい回らないクルマに感じます。
これはFIAT 500の圧勝というよりABARTH 595の弱点といったほうが正解ですね。
販売価格の違い
FIAT 500の300万円という価格も安くはありませんが、
ABRTH 595と比べたら格安なんじゃないでしょうか?
とくにアバルトは2022年8月22日に大幅な値上げがあったのでめちゃくちゃ差が開いてます。
これほど価格差があると「ちょっとイジッたクルマ」なんて差ではありません。
もともと競合するクルマとは思えませんが、
販売価格面で考えても競合することはないでしょうね。
ただ、アバルトは確かに高価ですが、内容を考えたらリーズナブルなクルマだと思います。
後からあんな高価なパーツを使ってカスタマイズしてたらとてもあの価格では作れません。
両車に対する率直な感想
現在、私はFIAT 500 TwinAirを所有してますし、
友人所有車のチョイ乗りを含むなら30台以上のFIAT 500に乗ってると思います。
コンディションもさまざまで、新車から28万円で売られていたボロ車まで乗りました。
一方、ABARTH 595(以前のABARTH 500も含む)も過去に所有した2台を含め、
延べ10台以上のクルマを運転しています。
アバルト車は145馬力のベースグレードから240馬力のチューンドカーまで乗ってますが、
その経験から感じていることを書いてみます。
まったく違うクルマ
結論からいうとFIAT 500とABARTH 595はまったく別のクルマです。
確かにカタチは似てますが別のクルマですね。
それはパワーが違うとか乗り心地が違うという機械的な話しではなく、
乗る側の覚悟とか込める気持ちが全然違うクルマだと思います。
こういうメンタル面の違いだけでもこの両車を比較検討して悩む人なんてまずいないと思います。
百歩譲って予算面とか販売価格を無視するとしても、
現物の実車を目の前で見て試乗すれば全然違うクルマだということは誰でもわかります。
漂う雰囲気なんかも全然違っていて、もしかしたらカタチまで違って見えるかも知れません。
こんなこと書くのもなんですが、この記事みたいな比較は本来無意味ですよね。
男女オーナー比
日本ではFIAT 500の女性オーナー率が非常に高いといわれていて、
オーナー全体の60%くらいが女性じゃないかといわれています。
対してABARTH 595は圧倒的に男性オーナーが多いようです。
このオーナー比率の違いが両車の性格を表しているように思います。
ABARTH 595はノーマルでも足が硬く爆音気味のクルマなので、
普通の女性が好むようなクルマになってません。
早い話しがかわいくないんです。
それでも最近は女性アバルトオーナーって増えてますね。
こういう女性オーナーですが、
おそらくFIAT 500と迷った人ってほとんどいないんじゃないでしょうか?
私の身近にも一人女性アバルトオーナーがいますが、
迷っていたクルマはFIAT 500ではなくスイフトスポーツでしたね。
どっちが人気車?
現役アバルトオーナーには申し訳ないですが、
これはもう圧倒的にFIAT 500の勝ちですね。
ABARTH 595なんてはっきりいって物好きが乗るクルマで、
普通の人は食指も動かないと思います。
FIAT 500がかわいくて乗ってる人だとタダでもらえるといわれても断るかも知れません。
私も過去にアバルト車に乗ってましたが、
これはもう完全にマニア向けのクルマとして買ってます。
普通の人もたくさん乗ってるFIAT 500とは比べるべくもないクセの強いクルマだと思います。
まぁ、そのクセがアバルトの魅力なんですけどね…
まとめ
こんな比較記事を書いていて失礼な話しだと思いますが、
もし何かの勘違いでFIAT 500とABARTH 595を迷っているのなら大変な思い違いをしてるかも知れません。
冒頭に書いたBMWとアルピナとか、
ポルシェとルーフというのは比較してもいいクルマだと思いますが、
FIAT 500とABARTH 595はそういう関係のクルマではないですね。
ちなみに私はどっちも自分のクルマとして所有した経験がありますが、
使用用途は全然違うクルマとして購入しています。
ただ、この両車…一つだけ共通したところがあって、
それは両車とも運転すると楽しいというところですかね。
楽しさを比較するのは「アリ」かも知れません。
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