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アバルトの5速マニュアルとMTA 両方経験した元オーナーが検証します

FIAT500関連
出典:ABARH公式
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ABARTH 595や695には5速MTとMTAと呼ばれる自動クラッチ式ミッション車があります。
最新のABARTH 695にもこの二つのトランスミッションは用意されますが、
買うならどちらがおすすめなんでしょうか?
今回は両ミッションの所有経験がある私がメリットとデメリットを検証します。

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MTAの少し厄介な特徴

アバルトが搭載しているMTAはFIAT 500が積んでいるデュアロジックによく似てますが、
厳密には別物です。
ただ、構造的には同じような仕組みなので、走った感覚などはほぼ一緒です。
デュアロジックを強化したタイプという解釈で概ね間違ってはいないと思います。

ただ乗ったときの感覚はFIAT 500とはちょっとだけ異なります。
何が違うかといえばやはりパワーやトルクが違うので、
FIAT 500の感覚で発進しようとするとよりギクシャクしやすい気がします。
もっと正確にいうとパワーやトルクがある分、
アクセルを踏みすぎるとフィアットより突進する勢いがあり、
そこで慌ててアクセルを緩めるとギクシャクします。

これをもうちょっと細かく説明すると、
不慣れなうちは発進しようとアクセルを踏んでも想像通りに前進しないと感じることがあります。
これは実際に前進しないのではなく、クラッチのミートポイントを身体が把握してないので、
ついつい「え?進まない!」と思ってアクセルをさらに踏み込んじゃうんです。
すると急にクルマがグッと前に動いてびっくりしちゃうという感じです。

この一連の動きに慣れないと不自然な挙動に感じられてしまいます。
そうなると思いっきりMTAに対して批判意見が出て来ます。
しかし多くの場合、適切に操作できてないことが多いように思います。
MTAは一から十まで何でも自動でやってくれる楽チン機械ではなく、
機械の特性を理解して運転者がそれに合わせた操作をしてやる必要があります。
実は普通のATとは違って自分でやることもある機械なんです。
この段階でそれを理解してないと厳しい評価になりやすいです。

そして問題なのはメーカーがATのような楽チン機械だと宣伝してるところもありますね。
MTAの正体はあくまでも機械で繋ぐ自動クラッチを積んだマニュアルトランスミッションです。
トルクコンバータ式オートマチックトランスミッションではないので誤解しないことが重要です。

こんなことを書くとデリケートに扱わないと乗れない機械だと思われてしまいそうですが、
少し乗って慣れればクラッチのミートポイントも掴めるようになるので、
誰でもスムーズに発進することが可能です。
マニュアルミッションの場合はクラッチを自分の左足で繋ぎますが、
MTAはこれを自動でやってくれるので慣れるまでミートポイントがわかりにくいという話しです。

少し余談ながらフィアットは「デュアロジック」、アバルトは「MTA」と表記されますが、
フィアット社はどちらもデュアロジックと呼んでるようです。

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MTAのATモードは厳しい?

スポーツ性の高いセミATというとポルシェのPDKなどが頭に浮かびますが、
あれはATモードでもかなり優秀ですし速いです。
しかし、残念ながらMTAはあんな爆速でシフトチェンジしてくれる精密機械ではありませんし、
ATモードのシフトスケジュールもそれほど賢くないです。

もし5速MTよりタイムを出したいから選ぼうと思ってるなら誤った選択になってしまいます。
ポルシェPDKのようなわけにはいきません。

また、BMWのM3やM4もMT車よりM DCT車のほうが名実ともに速いです。
それくらいM DCTが優れているんですが、MTAにそういう走りを期待するのは無理です。

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MTAの注意点や特徴

ではここでMTAに対する率直な印象を書いてみます。
メリットやデメリットというより、特徴と考えていただけると幸いです。

アバルト MTA
出典:アバルト公式

整備費が高い

MTAはフィアットのデュアロジックより高価なパーツです。
ということは整備代も高いわけです。
デュアロジックはクラッチ含めてフルOHすると約40万円くらいですが、
MTAは約60万円くらいかかります。
もし壊れたらデュアロジックより修理代は高いです。

シフトチェンジは遅い

MTAは高性能スポーツカーが搭載してるセミATのような高速シフトチェンジはできません。
パドルでチェンジすると一寸待ってから変速されるようなイメージです。
スポーツ走行できないわけではありませんが、
デュアルクラッチを搭載した超高性能セミATとはまったく別物です。
(あの価格でそこまで高性能なセミATが積めるはずありません。)

ポルシェPDKやBMWのM DCT DriveLogicと、
普通のBMWが積んでるDCTやワーゲンのDSGを同じような物と勘違いしてる人がいますが、
これは精度や耐入力トルクなども含めまったくの別物です。
当然ながら価格も全然違います。

残念ながらアバルトのMTAはPDKやM DCT DriveLogicほど高性能ではありません。
トランスミッション本体の価格も一桁違います。

多少ギクシャクしやすい

MTAはその構造上、どうしてもギクシャクしやすいです。
慣れて上手に操作できるようになるとかなりスムーズに走らせられるようになりますが、
それでもトルクコンバータを使っている普通のATのようにはいきません。

最新のポルシェPDKなどはほとんど変速ショックを感じませんが、
MTAはガッツリ変速ショックを体感させてくれます。
これが「味」なんですが、これを不快に思う人にはキツイかも知れません。

なお、MT車と同様、変速時に気持ちアクセルを戻すとショックは軽減されます。
変速タイミングがわかるようになるとそこそこスムーズに走らせられます。
これを上手く操れるようになると別の楽しさも感じられるものです。

ただ…実のところそんなに簡単に慣れるものではありません。
いつシフトチェンジするのかはっきりわからないのがMTAです。
これに早く慣れることができる人と全然慣れない人がいます。
幸い私は慣れることができましたが、何年乗っても慣れない人もいます。

私から言えることは…

「全然慣れない人もいるので注意しましょう」

です。

初期595だとMTAしかない

ABARTH 595が発売開始された当初はMTAモデルしかありませんでした。
(併売されていたABARTH 500が5速MTでした。)
これはMTAの注意点ではありませんが、意外とご存知ない方もいるので特記しておきます。

私が自分のABARTH 595にMTAモデルを選んだのもMTAが良かったというより、
単純にMTAしかなかったからというのが正しいです。
当時は高性能車がセミATを搭載するのはトレンドだったので、
大いに期待したものです。
しかし結果は…「スポーツ走行したいなら5速MT一択」だと感じたのが正直なところです。

燃費はMTよりいい?

一般にトルコンATはマニュアルミッションより燃費で不利です。
しかし、MTAはそうでもなさそうです。
フィアット社もカタログでは5速MTのほうが燃料消費量は少ないとしてますが、
非公式ながら「MTAのほうがやや燃費で優れるかも」と認めてます。
実際に両車を経験した人も同じような発言をされる方が多いようです。

残念ながら私は厳密に同じ仕様車同士で比較したことがないので何ともいえないですが、
確かにABARTH 500(5速MT)より僅かながらMTAの595のほうが良かったです。
これは想像ですが、おそらく燃費向きなタイミングで変速されるからだと思います。
普通に走らせるだけのときはMTAのほうが効率よく走ってくれるんでしょうね。
ただ、その走りが気持ちいいかどうかは別の話しです。

また、アバルトはスポーツモードのほうが燃費で優れる傾向にあります。
これは加速するためのアクセルオン時間が短くなるのが原因だと考えられます。
MTAの595のほうが燃費に優れていたのはパワーもトルクもあったことで、
交通の流れに乗るまでの加速時間がABARTH 500より少なかったんだと思います。
それも燃費が良かった理由の一つなんでしょうね。

耐久性は?

おそらく購入検討されている方が一番気になるのは耐久性だと思います。
これははっきり言って5速MTとは比べられません。
長期的に維持しようと思うとかなりお金もかかってしまいます。

もっとはっきり言ってしまうとMTAで少々楽な運転がしたいのなら、
その必要経費だと割り切ったほうが良さそうです。

私の身の回りにいる何人かのMTA搭載車を見てみると、
大体5万kmを超えたあたりでトラブルを経験する人が多いように思います。
FIAT 500のデュアロジックだと7万km前後で寿命を迎える印象なので、
クルマにパワーがある分、アバルトMTAのほうがシビアなのかも知れません。

一部のフィアットやアバルトの専門店が「そんなに壊れませんよ」とか言ってますが、
言葉通りには信じないほうがいいと思います。

5速MTの注意点や特徴

アバルトのマニュアルミッションといえば今や左ハンドルで買える希少なクルマとなっています。
その理由だけで買う人もいるようですが、多くの方はそこまでのマニアではないと思います。
もっと現実的な理由で迷っているんじゃないでしょうか?

アバルト マニュアルミッション
出典:アバルト公式

運転は難しい?

アバルトのマニュアルを検討されてる方からよく聞かれることがあります。
それは…「運転って難しいですか?」です。

久しぶりにマニュアルに乗るとか、ずっとAT車ばかり乗ってたという人が多い時代です。
そういう方々が心配されるのはもっともだと思いますが、
これに関しては「簡単です」で合ってると思います。

アバルトって凄くスパルタンなマシンと思われているフシがありますが、
全然そんなことはありません。変な心配はまったく無用です。
安心して挑戦しても大丈夫です。

アバルトなんかより昔の空冷ビートルやクラシックミニのマニュアル車のほうが10倍くらい運転は難しいと思います。

坂道発進は難しい?

同じくらいよく聞かれるのが坂道発進についてです。

「坂道発信が心配で…」

これはそんなに心配する必要はないと思います。
斜度5%以上の坂ならヒルホールドシステムが作動しますし、
そこまでじゃない緩い坂ならクルマの後退もゆっくりです。
それに手元のサイドブレーキ操作もしやすいクルマです。

アバルトは発進時にエンジン回転を高めてくれるアクセルサポートも入りますし、
かなり強引なクラッチミートとかをしなければほとんどエンストなんてしないクルマです。
例えば平坦な道でゆっくりクラッチを繋ぐと何事もなかったように走り出します。
それくらい柔軟性あるクルマなので多少の坂くらいは大丈夫です。

私がABARTH 500(5速MT)を所有してたとき、
何人かのマニュアル慣れしてない人に試乗させてあげたことがありますが、
全員すぐに慣れて普通に走れるようになってました。
ホントに簡単なんです。

スポーツ走行向きではない?

アバルトの5速MTはスパッと入るミッションですし、
変なクセもありません。
だから運転はしやすいマニュアルトランスミッションだと思いますが、
スポーティーかと聞かれると返答は厳しくなってしまいます。

特別スポーツカー用に仕立てられた特製ミッションではないので、
どこまでいっても乗用車のマニュアル車という感じです。
シフトストロークもやや長めです。
私はこのほうが乗りやすいのでいいと思いますが、
中には超高剛性なスポーツミッションを欲しがる人もいますね。

もっともイタリア車のマニュアルミッションってもともとこんな感じで、
伝統的なイタリア車の雰囲気を踏襲してるとは思います。

右ハンドルは厳しい?

別記事にも書いてますが、5速MT車の右ハンドルは要注意だと思います。
これは私の個人的な意見ではありますが、
マニュアル車を買うなら左ハンドルのほうがいいと思います。
後で後悔しないためにも必ず左右両ハンドルを試乗して決めましょう。

これは想像ですが、10人中7~8人くらいは左を選ぶような気がします。
それくらい左ハンドルのほうが乗りやすいんです。

結論(まとめ)

今回はアバルトの5速MTとMTAについて検証してみました。
私は過去に両方のミッションを経験してますが、
総合的に考えておすすめしたいのはやはり5速MTです。
その理由は以下になります。

・5速MT運転はそんなに難しくない

・MTAはアバルトらしい走りに貢献してると思えない

・MTAは整備費用がかかる

MTAはセミATとしては万能的に使えるタイプであり普通に走れますが、
特別スポーツ性が高いわけでもなく、
かといってコンフォート性に優れてるわけでもありません。
鬼のような耐久性を持ってるわけでもありませんし、
選ぶ理由があまりないと感じてます。

もちろんイージードライブが可能というメリットもありますが、
アバルトみたいなクルマにそれを求める人は少数な気がします。

ただ、そんなアバルトでもイージードライブを重視する人はいますし、
年がら年中5速MTを操作しながら乗りたいなんて思わない人だっています。
そういう人はMTAを選んだほうがいいです。
アバルトの5速MTはそれほど運転が大変ではないと書きましたが、
それでも自分の足で操作しないといけないクラッチペダルはありますし、
シフトチェンジも自分の手でしないといけません。
それを楽しいと感じるなら何の問題もありませんが、
それを面倒とか厄介だと感じているなら無理して5速MTなんか買うと絶対後悔します。

それにそこまで無理して乗るほど5速MTも優れているわけではないです。
はっきり言って5速MTもMTAも一長一短があってどっちを選んでも弱点はあります。
それなら少しでも自分の乗り方に合ってるほうを選ぶほうがいいですよね。

最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも5速MTとMTAで迷われている方の参考になっていれば幸いです。

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