世の中にはパーツ持込整備を引き受けてくれる整備工場と拒否する整備工場があります。
まさに対極な対応ですが、そこにはそれぞれキチンとした理由がありそうです。
今回はそれについて検証してみたいと思います。
なぜ対極な整備工場が存在するのか?
ビジネスとしてニーズがあることと、それを求める客がいるという単純な理由です。
それをビジネスチャンスと捉えるか、リスクしかないと考えるかは個々の整備工場次第です。
自動車整備の世界では、どうしても怪しげなパーツ利用は大きなリスクを伴います。
私が懇意にしている整備工場は正規ディーラーも含め複数ありますが、
とくに信頼している整備工場がちょうど持込拒否するお店と持込大歓迎というお店です。
完全に水と油のように対応が違うわけですが、実は共通点もあります。
その両工場はともにすこぶる腕の良い整備工場というところでしょうか。
しかし、自動車整備に対する方向性や考え方がまったく違います。
商売としての考え方も違いますし、入庫しているクルマも微妙に違います。
整備工場というところはオーナーの考え方でまったく方向性が変わってしまいますが、
持込拒否するお店のオーナーは純正パーツ信奉者といえるほど純正パーツにこだわっています。
しかも純正パーツであっても出所不明のパーツは嫌がります。
理由は保証の問題があるからです。
正規ルートで仕入れたパーツはもし不具合が起きても一定期間は保証がついています。
これが何人のお客さんを救って来たか知れません。
そんな経験があるのでパーツの持込は原則お断りしています。
それが顧客を保護する最善の方法と確信しているからです。
その一方でパーツ持込を歓迎する整備工場もあります。
こちらはどういう理由からでしょうか。
もちろん商売としてお金になるから受け入れているというのもありますが、
もっと大きな理由があります。
それは世界からあらゆるパーツを確保することなど物理的に不可能だからです。
わかりやすくいえばパーツの確保に関して街の整備工場では限界があるということです。
自店が完璧にあらゆるパーツを用意できるならそんな対応はしないかも知れません。
しかし実際にはパーツ確保に苦心することは普通にあります。
パーツが確保できず整備を待ってもらうことを由としない整備工場はどう対応するでしょうか?
そういう工場は持込を拒否しません。
自宅に何台もクルマのある方なら待たせても大丈夫かも知れませんが、
多くの客は素早くクルマを修理してもらいたいと思っています。
だから客がパーツを持込むことを許容するのです。
これは私の個人的意見ではありますが、パーツの入手能力が乏しく、
客を必要以上に待たせる整備工場は例え腕があっても評価は低いです。
そういう部分も含めて整備工場は評価すべきだと思います。
優れた整備工場は部品を確保する能力も高いのです。
持込整備の問題点
パーツ持込可能というのは客側からしたらありがたい話しですが、
とても大きな問題もあります。
それは持ち込まれるパーツがどんな品質の物かわからないというところです。
客が間違いのない高品質パーツを用意してくれればいいんですが、
現物を見て「なんだこりゃ!」っていう粗悪なパーツだってあります。
そういうパーツを使うと原因不明のエラーを吐き出すなどしてクルマは不調になりやすいです。
その粗悪パーツが原因で全然関係ない関連パーツの動きがおかしくなって故障することもあります。
つまりちょっとケチったために他のパーツを壊してしまい大金がかかる修理になることもあるのです。
パーツを持ち込む客の多くは少しでも安く修理したいためどこかで安いパーツを買って来ます。
それが悪いとはいいませんが、それで粗悪品をつかまされていたら最悪です。
極端に価格の安いパーツはかなりの確率で粗悪品です。
確かに純正パーツは高すぎるかも知れませんが、
純正の半額以下で買えるようなパーツは普通に考えておかしいです。
そういう怪しげなパーツが持ち込まれるリスクがあるのです。
そして、そんなパーツを使って不具合が出たときの責任の所在も曖昧です。
自分で粗悪パーツを持ち込んだくせに、整備工場に責任転嫁するとんでもない客もいるのです。
持込拒否する整備工場は技術的に未熟?
これは結構クルマに詳しいと自称されてる方が主張しているように思います。
つまり腕のある整備士ならどんなパーツでも上手く修理するものだという誤った考えから来ています。
もちろんそんなことがあるわけありません。
同じ自動車修理でも板金修理と自動車整備は違います。
優秀な整備士は的確に故障診断をし、最適なパーツを選定し、精密な修理を行います。
その見極めと判断は極めて正確で、社外品でも大丈夫と判断することもあれば、
ここは純正パーツじゃないとダメだと判断することもあります。
優秀な整備士ほど社外品パーツの問題点を知っています。
過去の経験から〇〇のパーツは安いが耐久性に問題があるとか、
価格が高いだけで精度が悪いとかパーツの性質までも熟知しています。
ただ、確かに持込拒否をしている整備工場ではそういう経験値が低く、
極論をいえば純正パーツしか触ったことがなく社外品の良し悪しがわからないというのはあります。
その点、持込を歓迎している整備工場のほうが場数を踏んでいます。
例を挙げるとベンツのNOxセンサーには膨大な数の社外品がありますが、
経験値の高い整備士は使って大丈夫なパーツと使わないほうがいいパーツの見極めができます。
持込整備を許容している整備工場というのは極めてその方面のスキルが高いです。
パーツの持ち込みには対応しますが、もし顧客の用意したパーツに問題があれば、
そのパーツを使っても大丈夫かどうかを的確に判断しアドバイスしてくれます。
客の用意したパーツなら後のことなど考えず平気で使ってしまう整備工場もありますが、
こういうところは避けたほうがいいです。
また、持込を拒否するとか許可するという問題とは別に、
経験値のある整備工場は社外品パーツを手配するときも信頼性が高いです。
問題のあるパーツは避けてくれます。
もちろん星の数ほどある社外品パーツすべてを知っているわけはなく、
実戦で初めて使う社外品パーツを用意することも珍しくありませんが、
そんなときも過去の経験からある程度はパーツの良し悪しを判断してくれます。
危なそうなパーツはなんとなくわかるものなんです。
社外品のパーツが粗悪とはどういう意味でしょうか?
もともと作りが悪いパーツもありますが、
多くは品質管理がされていないということが多いです。
純正パーツが高いのは品質管理にも費用をかけているからです。
どんなパーツでも1000個作れば不良品が混入する可能性があります。
それを排除するのにも費用がかかります。
純正パーツは不良品が市場に出ないよう品質管理されています。
怪しげな社外品はこういうところにコストをかけていません。
つまり不良品の混入率が高いのです。
だから運よく良品に当たることもありますが、
不良品を引いてしまう確率も高いのです。
どちらを選ぶかはその人次第
最終的な結論は自分で判断するしかありませんが、
基本的に現代のクルマというのは機械であると同時に電子部品の塊のような一面もあります。
クルマではなくパソコンの部品でもそうですが、
極端に安い製品は安物のコンデンサーを使っていたり、
基盤そのものが低品質だったりします。
クルマの電子パーツも一緒です。
安いパーツにはそれなりの理由があります。
上に挙げたベンツのアキレス腱ともいえるNOxセンサーなどはわかりやすいパーツです。
純正新品は約10万円もします。
まったく同じOEM品(ベンツマークのない同製品)が5~7万円くらいです。
信頼性の高い整備工場はこれらのパーツなら使っても大丈夫と判断すると思いますが、
粗悪な2~3万円くらいのパーツだと使わないほうがいいとアドバイスしてくれると思います。
持込整備に対応してくれる工場でもこういうアドバイスをしてくれるところならいいと思いますが、
「金貰って取り付けさえしてしまえば後のことなんて知らん」という工場もあります。
そういうところは避けないと結局自分に降りかかって来ます。
そこの見極めと判断は自分でするしかないのです。
私はどんな整備工場を利用しようが構わないと思いますが、
もしパーツを自分で用意して取付をお願いするなら責任は自分にあると自覚すべきだと思います。
その覚悟がないなら正体不明な社外品のパーツには手を出さないほうがいいです。
結局、高くついてしまう可能性が高いからです。
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