エンジンオイルには価格の高い物と安い物がありますが、
何が違うのでしょうか?
表記上のスペックがまったく同じ製品でも価格差があったりします。
もちろんブランドによる違いもあるでしょうが、品質なんかも違うのでしょうか?
今回はエンジンオイルの基礎を解説したいと思います。
エンジンオイルの種類
エンジンオイルは大きく分けると以下の3つが存在します。
この段階ですでに品質や価格に差が生じています。
それぞれの精製法などが異なるため呼び名が違うわけですが、
これが品質を表しているわけではありません。
例えばひとくちに鉱物油といっても品質にはバラツキがあります。
全合成油と書いてあればすべてが高品質・高性能というわけでもありません。
全合成油(フルシンセティックオイル)
全合成油は一般に100%化学合成油などとも呼ばれています。
原油を蒸留して生成されたガス成分(エチレンガス)から精製されるため、
不純物の極めて少ない高品質を実現しています。
また、高品質ゆえに耐熱性などにも優れ、エンジンの始動性も良好です。
走行性能を重視する方に全合成油は向いています。
市販されている高価なオイルはほぼ例外なくこのオイルです。
ベースオイルは何種類かありますが、一般的には以下の二つが有名です。
ポリαオレフィン(適応温度:約-70℃~約250℃)
ポリオールエステル(適応温度:約-50℃~約350℃)
部分合成油
これは鉱物油に全合成油を配合して作られたオイルです。
全合成油を配合することで鉱物油より耐熱性などの基本性能を上げており、
実使用上、問題のない品質を実現しています。
部分合成油は比較的リーズナブルな価格で販売されており、
自動車エンジン用オイルとして広く普及しています。
(適応温度:約-50℃~約200℃)
鉱物油(高度精製基油)
これは原油を蒸留してできた重質留分から精製したベーシックなオイルです。
化学合成オイルのように高度な精製は施されておらず、
硫黄や窒素といった不純物が完全には取り除けていません。
これが原因でスラッジなどを生みやすいため、
長期間使用するとエンジン内部が汚れやすいです。
一般的に安価なオイル製品のベースとして使用されています。
(適応温度:約-20℃~約120℃)
エンジンオイルの適応温度は120℃前後です。
このベースオイルの適応温度はあくまでもベースオイルだけの適応範囲を表しています。
実際はこれに各種添加剤を配合するため適応温度は下がって来ます。
(添加剤にも適応温度があります。)
間違えないように注意しましょう。
エンジンオイルはベースオイルと添加剤からできている
エンジンオイルは元となるベースオイルと添加剤の混合物ですが、
この比率はおよそ8:2と言われています。
つまり20%分のさまざまな添加剤を配合して製造されるわけです。
その添加物にはどんなものがあるでしょう。
摩擦調整剤
エンジン内部の摩耗やノイズを抑えるために配合されます。
粘度指数向上剤
オイルの粘度が大きく低下しないために配合されます。
清浄分散剤
エンジン内部の汚れを取り込み、固まらず分散してクリーンな状態に保つために配合されます。
流動点降下剤
低温時でもオイルが硬くならないために配合されます。
酸化防止剤
潤滑油の酸化を防ぐ成分で、
エンジンオイルの劣化を抑制するために配合されます。
防錆剤
金属の表面に付着して錆の発生を防ぐ成分で、
エンジン内部の錆びを防止するために配合されます。
消泡剤
オイル内の泡を抑える成分で、
エンジン内部に発生した泡を消して油膜切れを防ぐために配合されます。
これらの添加剤を調整して配合することでオイル製品が作られています。
当然ながらオイル製品によってこの配合バランスは異なりますし、
使われている添加剤の品質も異なります。
レーシングエンジン用オイルは高性能?
たまに「F1用エンジン高性能オイル〇〇円」などと宣伝してオイルを売っている店がありますが、
騙されないようにしましょう。
F1エンジンに使われているオイルは石油メーカーがそのエンジン用に特製したスペシャル品で、
いっさい市販などされていません。
その成分組成の研究・開発には莫大な費用がかかっているといわれています。
また、仮にそのオイルが本物のF1エンジン用オイルだったとしても市販車には向いてません。
純レーシングエンジン用オイルは必要な添加物しか入っていない競技専用品で、
一定の油温で使用することしか考えていません。
そのため例えば「0W-30」などと表記されるマルチグレードのオイルではなく、
一般にシングルグレードのSAE30とかSAE40のオイルが使われています。
また、レースエンジン用オイルは長時間使用することも考えていないので、
そんなオイルを市販車のエンジンに使用するとエンジンを傷めてしまいます。
レーシングエンジン用オイルだから高性能なオイルというわけではありません。
オイルの製造元はすべて一緒?
ときどき「オイルはすべて同じところが製造しているので中身は一緒」と聞くことがあります。
これはどういうことでしょうか?
実は石油製品の最初の一歩は原油を精製するところから始まります。
この原油を精製する製油所というのは世界中でも約130ヵ所ほどしかありません。
そのため多くの石油関連製品が同じ製油所で精製されている可能性があることを指しています。
確かにこれは本当の話しです。
しかし、数が限られているといっても一つや二つではありません。
例え話しとしては間違っていませんが、正しい話しというわけでもありません。
高価で高性能なオイルとは?
価格の高いオイルと安いオイルでは何が違うのでしょうか?
結論からいうとすべてが違います。
エンジンオイルというのはベースオイルに添加剤を配合して作られますが、
高価で高性能なオイルは上質なベースオイルと添加剤を使い、
コストをかけて研究された配合比率で作られています。
この配合比率の研究開発費は膨大で、
この費用が製品価格に反映されています。
ベースオイルの高い順番は、
全合成油 > 部分合成油 > 鉱物油
となりますが、
高価な全合成油にもピンキリが存在します。
つまり高いオイルは最上級な全合成油のベースオイルを使い、
費用をかけて研究開発された配合成分によって、
高価な添加剤を配合して作られています。
もうおわかりだと思いますが、
安いベースオイルを使って、
汎用的な配合データに基づいて、
安い添加剤を配合して作れば安いオイルが完成するわけです。
このどちらの製品も表記上のスペックはまったく同じ
「100%化学合成オイル 0W-30」(例)
などとなります。
高いほうのオイルは1L/4,000円くらいするかも知れませんが、
安いほうは1L/1,000円くらいだったりします。
何も知らないと「同じスペックのオイルが3,000円も違う」と思ってしまいますが、
中身はまったく別物なわけです。
安いオイルを使ってはダメなのか?
ホームセンターなどで特売されている安いオイルを使うと何か問題があるのでしょうか?
その心配はいりません。
使っても大丈夫です。
ただ安い製品は高価な高級オイルに比べて耐久性が劣ったり、
洗浄成分が少なかったり、何か理由があります。
あまり長期間オイル交換なしで使うのは避けたほうが良さそうです。
所定の交換サイクルを守って定期的に交換していればまず問題はありません。
まとめ
定期的に交換していれば大きな問題など起きないエンジンオイルですが、
適切にそのエンジンに合ったオイルを選んで使う必要はあります。
規格外のオイルを使ったり、長期間交換しなければ、
高級オイルを使っていてもエンジンにダメージを負わせてしまいます。
また、過剰に不必要な高性能オイルを使う必要もありません。
むしろ高価な高性能オイルの中には耐久性を削って性能を追求している製品もあります。
自分のクルマに合ったオイル製品を適切に使うことのほうが大切です。
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