ついに「フェラーリ プロサングエ」がそのベールを脱ぎました。
これほど待望という文字が似合うクルマは近年珍しいかも知れません。
ハイパフォーマンスSUVがクルマの大きなジャンルとして確立されてからも、
フェラーリはなかなかその市場に参入しませんでした。
まさに満を持しての登場といえるでしょうか。
今回はそのプロサングエと最新のライバル車を比較してみたいと思います。
ライバルSUV車との比較
プロサングエのライバルとは一体どんなクルマたちでしょうか?
フェラーリ自身はプロサングエにライバルは不在と考えているようですが、
もちろん、そんなわけはありません。
ただ、確かにそこらのSUVと「跳ね馬様」を比較するのは失礼かも知れません。
そこで実績豊富な実力派ライバルたちとプロサングエを比較してみたいと思います。
ランボルギーニ ウルス ペルフォルマンテ
フェラーリのライバルといえば今も昔もやはりランボルギーニですね。
しかも最新ペルフォルマンテはパイクスピーク市販SUVクラスで10分32秒064というSUV最速タイムを叩き出しています。
その動力性能は圧巻で、例えプロサングエでも簡単に勝てる相手ではないでしょうね。
ポルシェ カイエンターボGT
ハイパフォーマンスSUVの元祖といえるのがポルシェカイエンですね。
極論をいえばすべてのライバルがこのクルマをターゲットにしているといっても過言ではありません。
その快速ぶりはスポーツSUV最速と称され、
7分38秒9でニュルブルクリンク北コースを走破しています(公式記録)。
この記録はSUV最速なだけでなく、超高性能スポーツカーと比べても遜色ないデータです。
すべてのカテゴリーの計測順位の中に入っても、
SUVで唯一TOP100に入っている超絶ウェポンといえるクルマです。
また、ポルシェらしく発表されているカタログデータを軽く上回る俊足ぶりも見せており、
0~100km加速データなど3秒を切る数字まで記録されています。
もしプロサングエが速さを売りにするなら間違いなく最強のライバルになると思います。
アストンマーティン DBX707
ランボルギーニ ウルスやポルシェ カイエンターボGTも素晴らしい高性能SUVではありますが、
総合的にもっとも手強いライバルなのはアストンマーティンDBX707かも知れません。
このDBX707は本当に素晴らしいハンドリングを持っていて、
多くのライバルがベンチマークにしているのは間違いありません。
単なる加速性能や最高速度、見た目の高級感だけではなく、
ブランドとしてのネームバリュー、クルマとしての機能面まで含めた視点で見ると、
現代最高のSUVはこのDBX707ではないかという気がします。
私は残念ながらDBX707には乗ったことがありませんが、
ノーマルDBXに乗って一番最初に感じたのはノーズの挙動のナチュラルさでした。
ノーズがSUVとは思えないほど軽いのです。
ニュルブルクリンク(北コース)は全長20.6Kmもあるコースで、
そこには直線や高速コーナー、低速コーナーが多数あるだけでなく、
激しいアップダウンやさまざまな路面コンディション箇所もあって、
自動車にとってもっとも過酷なコースとなっています。
普通のサーキットならブレーキの弱いクルマでも一発のタイムは出せますが、
この過酷なニュルブルクリンクではそんなごまかしはききません。
まさにクルマもドライバーも真の実力が求められる世界最難関のコースです。
ちなみに現在の無改造・市販車部門最速ホルダーはポルシェ911GT2 RSで、
記録は6分43秒3となっています。(改造車部門でも同車がトップです。)
他にも手強い強豪ライバルはたくさんいると思いますが、
今回は比較対象としてこの3台をピックアップしたいと思います。
販売価格的にはロールスロイス カリナンあたりがもっとも相応しいのかも知れませんが、
カリナンは重くもっと巨大なSUVなので、
プロサングエとはちょっと住む世界が違うクルマに思えます。
そうなるとやはり動力性能面をメインに比較するほうが誰しも興味ありそうです。
ではそんなライバルたちと簡単にスペックを比較してみたいと思います。
フェラーリ プロサングエ | ランボルギーニ ウルス ペルフォルマンテ | ポルシェ カイエンターボGT | アストンマーティン DBX707 | |
全長 | 4,973mm | 5,137mm | 4,940mm | 5,039mm |
全幅 | 2,028mm | 2,026mm | 1,995mm | 1,998mm |
全高 | 1,589mm | 1,618mm | 1,635mm | 1,680mm |
空車車重 | 2,033kg | 2,150Kg | 2,220kg | 2,245Kg |
ホイール ベース | 3018mm | 3,006mm | 2,895mm | 3,060mm |
エンジン | V型12気筒 DOHC 6.5L ガソリンエンジン (6,496cc) | V型8気筒 DOHC 4Lガソリン ツインターボ (3,996cc) | V型8気筒 DOHC 4Lガソリン ツインターボ (3,996cc) | V型8気筒 DOHC 4Lガソリン ツインターボ (3,982cc) |
最高出力 | 725PS /7,750rpm | 666PS /6,000rpm | 640PS /6,000rpm | 707PS /6,000rpm |
最大トルク | 73kgm /6,250rpm | 86.7kgm /2,250~4,500rpm | 86.7kgm /2,300~4,500rpm | 91.7kgm /2,750~4,500rpm |
ミッション | 8速DCT (F1マチック) | 8速AT | 8速AT | 9速AT |
駆動方式 | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD |
タイヤ(前) | 255/35R22 | 285/40R22 | 285/35R22 | 285/40R22 |
タイヤ(後) | 315/30R23 | 325/35R22 | 315/30R22 | 325/35R22 |
0~100km 加速 | 3.3秒 | 3.3秒 | 3.3秒 | 3.3秒 |
最高速度 | 310km以上 | 306Km | 300km | 310km |
燃費 | 非公表 | 14.1km/L (WLTP) | 14.1km/L (WLTC) | 14.2km/L (WLTP) |
乗車定員 | 4人 | 5人/4人 | 4人 | 5人 |
販売価格 | 約5,600万円 | 約3,600万円 | 約2,850万円 | 約3,100万円 |
こうして比較してみると販売価格の突出さがわかります。
超高級SUVとして知られるロールスロイス カリナンより約1,000万円ほど高いです。
(カリナンは約4,250~4,950万円。)
こんな超高額なクルマなのに世界中からオーダーが殺到しているというから驚きです。
いかにプロサングエへの関心が高いかがわかります。
カタログスペックではライバルを圧倒?
そんなプロサングエですが、動力性能的にはどうでしょうか?
一覧表での比較を見ても明らかなとおり、パワー、スピードなど、
ほとんどの点においてライバルたちを圧倒しています。
多少、イタリア車あるあるの吹かし気味な性能スペックだとしても、
データを見る限りはナンバーワンの高性能SUVとなりそうです。
また、比較車の中で唯一ATではなくDCT(F1マチック)を採用しているのも見逃せません。
SUVに向いたミッションかどうかは議論の余地がありそうですが、
少なくとも速さを追求してDCTを採用していることは間違いなさそうです。
フェラーリの本気度が伝わって来るようです。
伝統のV型12気筒エンジンにこだわるプロサングエ
プロサングエがライバルたちと決定的に違うのはエンジンだと思います。
自然吸気V型12気筒エンジンを積んで来ました。
以前は最新ハイテクなハイブリッドエンジンでは?と予想されてましたが、
蓋を開けてみたら伝統のV12エンジンでした。
「フェラーリはV12エンジン持ってるんだから普通のことじゃん」
と思われたかも知れませんが、そういうことではなく、
これから売り出す新型車が大排気量NAエンジンを搭載してるなんて、
普通の自動車メーカーでは考えられないことです。
というか、そんな非エコなエンジンを使うなんて許されないかも知れません。
それが許されるのがフェラーリの凄さじゃないですかね。
ちなみに搭載されるエンジンは伝統のF140系の最新エンジンとなっています。
もともと「エンツォ フェラーリ」用に開発されたエンジンですが、
改良に改良を重ねて現在最高エンジンの一つとなっていることは誰でもご存知だと思います。
そのパワーは812などでも立証済みで、比較的軽い車重とも相まって、
おそらくライバルたちより一段強烈な突進力を持っているように思います。
遅いフェラーリなんて許されない
諸元スペックを見るとわかりますが、ウルスはライバルより若干大きいようです。
逆にプロサングエは若干小さいことがわかります。
とくに車高がちょっと低いですね。
プロサングエはフロントミッドにエンジンを、リアにトランスミッションを積んでいます。
徹底的に重量バランスにこだわった作りをされており、
おそらくかなり重心位置にも気を配った設計になっていると思われます。
また、サスペンションとブレーキも徹底的に煮詰めて開発されたシステムを搭載しており、
既存の強力パーツを寄せ集めて組み上げたような安易な作りはされてません。
そして、プロサングエは他のSUVたちと違い、
あまり荒地の走破性など考えてなさそうなスペックとなっています。
そこだけに注力してるとはいいませんが、
舗装路での走行性能を最重視して作られているように見受けられます。
カタログ値を信じるなら車重もライバルSUVたちよりかなり軽く作られており、
かなり本気で速さを狙っているクルマだといえます。
実際、フェラーリはこのプロサングエをSUVとは呼んでないようで、
現代的なスポーツカーの一形態だと考えているのだと思います。
ウルスとカイエンは兄弟?親戚もいっぱいいる?
プロサングエとの比較ではありませんが、
上の諸元を見るとウルスとカイエンが非常に似てることがわかります。
まるで兄弟のようです。
これはもうおわかりだと思いますが、この両車は兄弟車です。
プラットフォームもエンジンも共有するクルマです。
これ以外にもベントレー・ベンテイガやアウディQ7やQ8、
フォルクスワーゲントゥアレグなどもプラットフォームを共有してますね。
つまりプロサングエはこういった高い量産効果を持つ高性能ライバルと戦わねばならないのです。
価格が非常に高いのも仕方ないかも知れません。
そして、それだけ高いコストをかけても売れるのがフェラーリ プロサングエですし、
大量生産されるハイパフォーマンスSUV兄弟軍団とはそもそも立ち位置の違うクルマだといえます。
プロサングエはお金があっても買えない?
フェラーリには一部の選ばれた人にだけ購入権が与えられる特別なモデルがあります。
歴代の限定モデル各車がそれに当たりますが、
カタログモデルでも簡単に買えないクルマがあります。
フェラーリは年産1万台ほどのメーカーですが、
その生産台数はブランド維持という観点から厳密にコントロールされています。
もちろん現実的に生産能力的な問題もありそうです。
そのため、どれほど多くの受注があっても一定の台数以上は生産されません。
フェラーリはプロサングエ生産のために新しい生産設備などは作っていません。
つまり考え方は従来と変わらないということです。
このプロサングエは年産2,000台前後と予想されており、
すでにその受注台数は2023年の販売予定数に達しつつあるといわれています。
もしそのウワサが本当なら、今すぐ手を挙げても納車されるのはかなり先になりそうですね。
何度も仕様変更が実施された?
プロサングエはかなり以前からスクープされており、
目撃されるたびに姿カタチやエンジン音が変わっていたといわれています。
もちろん適当なエンジンを載せて他のテストをしていた可能性もありますが、
もっとも適したエンジンを探っていたのではないでしょうか?
こうしている今もライバルは続々と新型モデルを開発中で、
中途半端な仕様で出すことは許されないクルマだったことは間違いありません。
プロサングエが顧客に届けられるのは2023年になりますが、
2023年には更に強化されたウルスや800馬力といわれる新型カイエンが登場しそうです。
それらのライバルとも十分以上に戦える仕様に仕立てられたことは想像に難くありません。
また、プロサングエには高度にシステム化された数々の先進機能も備えられています。
これら一つ一つを見ても、まったく手抜きされていないクルマとなっており、
中途半端に妥協されて作られていないことがわかります。
まとめ
このフェラーリの最新型車はフェラーリの歴史を変えるクルマになったことは間違いないようで、
いろんな意味で期待値を込めて購入される方もいるようですし、
純粋にフェラーリが好きで購入される方もいるようです。
確実にいえることは簡単に買えないクルマであることと、
お金があっても買えないクルマになりそうということでしょうか。
おそらく、これからのハイパフォーマンスSUVの方向性にも影響を与えるクルマになりそうで、
このクルマ以降に開発されるライバル車がどんなクルマになるのかも興味深いものです。
しかし、さすがに5,000万円を大きく超えるとはちょっと想定外の価格でした。
なんとなく新型クラウン クロスオーバーに似てるので、
現実的に買えそうな新型クラウンを眺めてるほうが幸せになれそうです。
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