ドイツの伝統菓子であるバウムクーヘンは日本でもポピュラーな洋菓子として人気があります。
そして「ユーハイム」、「クラブハリエ」、「治一郎」、「ねんりん家」など、
たくさんの銘品が存在するわけですが、
このバウムクーヘン…本当はきちんとした製法があって、
ドイツではこの製法に則って作られたものだけがバウムクーヘンと名乗れることをご存知でしょうか?
今回はこの二つの違いについてご紹介したいと思います。
バウムクーヘンとバームクーヘン
ちょっとお菓子に詳しい人なら「バウムクーヘン」と書かれた商品と「バームクーヘン」と書かれた商品が存在することはご存知だと思います。
でも、ほとんどの人がその違いなんて気にしていないと思いますし、
なんならまったく同じ物だと思っている人もいると思います。
しかし、厳密にはバウムクーヘンとバームクーヘンは別物なんです。
バウムクーヘンというのは「国立ドイツ菓子協会」が定めた伝統製法によって作られるもので、
ドイツではマイスターの称号を持つ菓子職人さんが手作りします。
また、材料にベーキングパウダーを使用せず、油脂はバターのみで、
生地には卵2:小麦粉1:砂糖1:バター1の比率で作るものと細かく定められています。
(引用:国立ドイツ菓子協会より)
対して「バームクーヘン」は、そんな伝統製法の塊のようなお菓子ではなく、
日本独自の製法で自由に作られたお菓子です。
そのため材料や作り方に細かな指定はなく、各ブランドが自由に作っています。
腕利きのパティシエたちが競うように誕生させたのが「日本のバームクーヘン」だといえるでしょう。
「ユーハイム」本家本元系バウムクーヘン
日本にバウムクーヘンを紹介してくれたブランドが老舗のユーハイムです。
ユーハイムは頑なにドイツ伝統の製法を守っているブランドだといえます。
今ではバウムクーヘンはスーパーやコンビニでも買えるほど一般化したお菓子ですが、
かつてはそう簡単に食べられるものではありませんでした。
若い人だと信じられないかも知れませんが、
昔はバウムクーヘンといえばユーハイムくらいしかなく、
生産数も今よりずっと少ないものでした。
その後、時代の流れとともに独自の製法で作り上げられた商品が店頭に並び始めます。
それらはバウムクーヘンではなく、バームクーヘンと表記されていました。
そういう意味ではユーハイムこそ本物のバウムクーヘンであって、
多くの日本人が食べているのは「バウムクーヘンのようなお菓子」ともいえます。
コンビニやスーパーで簡単に買える商品は「バームクーヘン」であって、
実はドイツの伝統菓子「バウムクーヘン」ではないのです。
バームクーヘンの台頭
伝統製法によって作られるお菓子が本来のバウムクーヘンだということはわかりましたが、
製法の違うお菓子はバウムクーヘンを名乗ってはダメなんでしょうか?
また、お菓子としても大したものではないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
中には伝統製法に則っていないにも関わらずバウムクーヘンを名乗る商品だって存在します。
日本においては何か特別な規制があるわけではないのです。
1980年代になると伝統製法に則っていない商品がたくさん市場に出回りますが、
これらの商品は「国立ドイツ菓子協会」の製法規定に基づいていないからなのか、
多くはバウムクーヘンとは名乗らず「バームクーヘン」と名乗りました。
それは決して簡易的に作ったお菓子だからというネガティブな理由ではなく、
独自製法の新しい菓子なんだという気概や意味が込められていたように思います。
だからバウムクーヘンに似た安作りな菓子がバームクーヘンだという一部の説は間違っています。
バームクーヘンの中にも極上な逸品はあるのです。
超人気商品「クラブハリエ」のバームクーヘン
1979年、滋賀県に本拠を置く和菓子の名店「たねや」から洋菓子ブランドとしてクラブハリエが誕生しました。
(誕生当時の名称はボン・ハリエ)
このクラブハリエは従来の洋菓子作りにとらわれない新感覚のお菓子を次々と誕生させ、
またたくまに人気ブランドへと成長します。
そしてこのクラブハリエが作り上げたバームクーヘンこそ、
「日本のバームクーヘン」誕生の瞬間だったような気がします。
このクラブハリエのバームクーヘンはそれまでのバウムクーヘンとは異なる食感と風合いを武器に、
日本人の味覚に深く突き刺さる人気商品として定着しました。
今日では全国各地のお店がたくさんのバームクーヘンを製造販売していますが、
その中にはあきらかにクラブハリエから影響を受けたものも存在します。
クラブハリエの功績はとても大きいのではないでしょうか。
どちらが美味しいのか?
ではバウムクーヘンとバームクーヘンはどちらが美味しいのでしょうか?
もし人気のバロメーターを売上で計るなら「バームクーヘン」のほうが優勢かも知れません。
現在、日本における売上ナンバーワンの商品はクラブハリエのバームクーヘンだといわれています。
クラブハリエのバームクーヘンはドイツ伝統の製法では作られてないかも知れませんが、
その妥協しない徹底した製品作りは正に本物といえます。
そんなクラブハリエだからこそ、あえて「バウムクーヘン」と名乗らず、
「バームクーヘン」と名乗ったようにも思えます。
ドイツではほとんど売っていない?
しかし、伝統の味を重んじるドイツ人にとってはどうなんでしょうか?
実はドイツではバウムクーヘンというのは簡単に買えるお菓子ではありません。
というよりほとんど売っていません。
せいぜいクリスマスシーズンになるとケーキ店に置かれるくらいで、
しかもかなり高額な高級菓子です。
基本的には予約してマイスターに作ってもらう注文菓子で、
日常的に店頭在庫があって簡単に買えるお菓子ではないのです。
私もドイツへ行ったとき本場のバウムクーヘンを食べてみたいと思って探しましたが、
フランクフルトやミュンヘンといった大都市でも簡単には手に入りませんでした。
ドイツ人も日本のバームクーヘンが大好き
日本にいるドイツ人たちに聞いても、本国ドイツでは食べたことがないという人は珍しくありません。
それくらい本物のバウムクーヘンというのは簡単には食べられないお菓子なんです。
そのためドイツ人たちでさえも日本で初めて食べたという人が珍しくありません。
そんなドイツ人は日本のバームクーヘンをどう思っているのでしょうか?
多くのドイツ人が絶賛しています。
ドイツ人たちが帰国する際に持参する日本土産の上位に日本製バームクーヘンが入っているのです。
日本のパティシエたちはドイツのマイスターではありませんが、
決して味勝負で負けてはいないのです。
ただ、日本のTV番組でドイツのバウムクーヘンと日本のバームクーヘンの対決が放送されてましたが、
残念ながらそのときは僅差で敗れてましたね。
(生産国を伏せた状態での試食対決でした。)
なかなか本家本元の壁は崩せないのかも知れません。
日本人の多くは本物バウムクーヘンを知らない?
ユーハイムのバウムクーヘンは間違いなくドイツ伝統の製法で作られた逸品ですし、
他にも製法にこだわった本物志向の製品は存在します。
だから日本でも本物系のバウムクーヘンを賞味することは可能なんですが、
日本国内に流通している多くの商品は日本独自製法のバームクーヘンなのが実情です。
つまり、そもそも大半の日本人が本物の味を知らない可能性もあって、
年代の若い人ほど食べ慣れた日本のバームクーヘンのほうが口に合いやすいかも知れません。
まとめ
日本人が独自製法で作り上げたバームクーヘンが本物かどうかはさて置き、
その味は決して本物にも負けない逸品というのは間違いないんじゃないでしょうか?
それはドイツ人たちも認めるところです。
ただ、やはり本物の味を知っている人はユーハイムのような本物系に敬意を表すような気はします。
「バームクーヘン」はものすごく美味しいけど、あれは「バウムクーヘン」ではないよね。
という感じに。
やはり「バウムクーヘン」と「バームクーヘン」は別物…
味覚なんて人それぞれなので、最終的にはそういうことになるんじゃないでしょうか。
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